コラムcolumn

社会性の高い組織と大胆な投資配分へのシフトがイノベーションを開花させる2 ~経営課題調査からみる、日本企業のイノベーション力とKAIKA経営~

重要となる新事業開発の展開動向は?


図 4新事業開発の現状の成果
事業形態やビジネスモデルの変革に向けて、新事業開発の成果を高めることが欠かせない。

そこで、新事業開発の現状について聞いたところ、「成果が出ている」(「出ている」+「ある程度出ている」)企業が46.6%、逆に「成果が出ていない」(「あまり出ていない」+「出ていない」)企業が41.5%と拮抗した。【図 4】

新事業開発の成果の有無と、現在の主要事業の事業形態、ビジネスモデルの今後5年間の見通しの相関について分析すると、成果が出ていない企業では、「通用するか懸念がある」と回答する傾向があり、一方で、成果が出ている企業では、「通用する見通し」と回答する企業と、「大きく異なる形態に転換する必要がある」と回答する企業の2つに分かれた(ピアソンのカイ2乗検定で有意)【図 5】。



図 5新事業開発の成果と、現在の主要事業の事業形態、ビジネスモデルの今後5年間の見通しの相関
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さらにこれら企業の、新規事業開発に関する投資配分の特徴を分析したのが次の表である【表 1】。

新規事業の成果が出ている企業の投資配分を中央値でみると、出ていない企業に比べて、周辺領域や革新領域へ配分をシフトしている傾向がある。一方で、成果が出ておらず今後成果が出るか不安である企業は、既存領域への配分が高く、守りの新規事業投資という傾向が強い(調査では、【既存領域】既存顧客向けの既存事業の最適化、【周辺領域】「自社にとって新しい事業」への拡大、【革新領域】いまだ存在しない市場に向けた新事業の創出と定義)。

3年間、5年間、10年間の見通しと、投資配分について見ると、大きく異なる形態に転換する必要がある企業においては、明らかに既存領域から周辺領域や革新領域へ投資配分がシフトしていた。

表 1新規事業開発に関する投資配分の特徴分析
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これらのことから、成果が出ていて、かつ「大きく異なる形態に転換する必要がある」と回答した企業は、既存領域から周辺領域や革新領域へ投資配分を戦略的にシフトしている可能性がある。

社会性の高い組織風土が新規事業の成果を促進

既存領域から周辺領域や革新領域へ事業をシフトし、事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築を推し進めるにあたっては、次の結果から、組織風土(カルチャー)改革や意識改革が大切であり、とりわけ、社会や組織外との向き合い方が重要なことがわかる。

JMAは、価値創造のための経営モデルとして、①個人の成長と、②組織の活性化と、③社会との関係を同時に満たしていく『KAIKA』経営モデルを提唱しているが、今回の経営課題調査ではその1領域である「社会性=社会環境との向き合い方」についても調査した。

そこで、新事業開発の「成果が出ている企業」と「成果が出ていない企業」とで、「社会性=社会環境との向き合い方」の違いがあるか否かを統計的な検定を行い分析した結果、表の11項目において明らかに有意な差があることがわかった。【表 2】

表 2新事業開発の成果と、社会環境との向き合い方(KAIKA経営モデルにおける社会性)の相関
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新事業開発に成果が出ている企業では、日常的に自分たちが社会にどう役立ちたいかについての会話ができ、長期視点から社会や事業を考える機会があり、自分たちの活動が社会の期待に沿っているかどうかを常に確認するような企業文化をもっている。そして、広くさまざまな外部の意見に耳を傾け、さまざまな視点で、将来の市場の可能性を社会のなかから汲み取り、先見性をもった実験をしているような企業であるということだ。

経営側がこうした、社会への感度の高い企業文化を整備し、新領域への投資資源配分シフトも経営者が大胆に意思決定していくことが、イノベーションや事業構造変革を加速させる鍵であろう。