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オープンイノベーション実現に向け、長い時間軸とメタ視点で予算と組織を再設計する|日本企業がオープンイノベーションを進めるには その2

オープンイノベーション実現に向け、長い時間軸とメタ視点で予算と組織を再設計する

KAIKA経営実践の提言においては、「『長い時間軸』と『メタ視点(一つ上の視点)』をもって、自社が取り組む社会課題を設定しよう」と提言させていただいた。

P&Gの例の通り、オープンイノベーション推進に向けては、経営層が「長い時間軸」と「メタ視点」をもって意思決定をすることが不可欠である。すなわち、①自社の存在意義、提供すべき顧客価値の探索・認識、②自社内で保有している経営資源の棚卸しと、将来の戦略領域の設定、③将来戦略のために必要となる経営資源の把握、④必要となる経営資源の内生外生判断、⑤オープンイノベーションの意義の共通認識と戦略への位置づけ、の5点が重要となる。

2015年、国連では「持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals:SDGs)」として、17の目標が合意された。これらの社会課題は、自社の存在意義の定義いかんによって新市場開発・新ビジネスモデル構築の大きな機会となろう。
そうした新たな機会をつかむ際に特に重要となるのは、イノベーションに対する投資予算の配分である。近年、日本企業においては短期的な研究開発が増える傾向にある。経済産業省の調査によると、研究開発の9割が既存技術改良型研究であり、市場は見えているが技術の飛躍が必要な市場開拓型研究は8%程度、技術的にも市場的にも不透明な非連続型研究は1〜2%という状況だ。

そうした新たな機会を掴む際に特に重要となるのは、イノベーションに対する投資予算の配分である。近年日本企業においては短期的な研究開発が増える傾向にある。経済産業省の調査によると、研究開発の9割が既存技術改良型研究であり、市場は見えているが技術の飛躍が必要な市場開拓型研究は8%程度、技術的にも市場的にも不透明な非連続型研究は1~2%という状況だ(図2参照)。

これに比して、モニター・デロイトによるアメリカの調査によれば、中長期にわたって好業績の企業における資源配分ポートフォリオは「既存:周辺:革新」=「7:2:1」と指摘されている。
今後は、事業の枠を超えた全社的立ち位置をもって、経営資源を棚卸ししたうえで、オープンイノベーションの活用を視野に入れ、長い時間軸とメタ視点でイノベーション投資予算とその配分を設定することが重要となる。


¹P&G:コネクト・アンド・ディベロップ戦略、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2006.08.01
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もう1つ経営上重要となるのは、クローズドイノベーションとオープンイノベーションとを統合管理できる組織デザインである。

オープンイノベーションにおいては、①技術(学術研究、未顕在化技術、顕在化技術、特許など)の探索のみならず、②人材(人材交流、人材獲得)、③情報(アイデア、プラットフォーム)、④事業(提携やMAにつながる事業機能、企業・スタートアップ/VB)の探索、および融合が重要な活動となる。

例えばシスコシステムズでは、CEOの下に、ビジネス戦略が立案・実行でき、CTO役を兼ねるCDOが配置され、その下にゆるやかに繋がったクロスファンクショナルなタスクフォースを形成しイノベーションに取り組んだ。
このように、経営トップを中心として、研究開発、経営企画など機能横断的にコミュニケーションを密にできるチームを組成し、既存事業で積み上げてきたアタリマエを持ち込まずに活動を推進させることが重要となる。

なお、近年は投資側においても、「持続的成長に向けた長期投資(ESGや無形資産に着目した投資など)」の研究が進んでおり、投資先の長期的イノベーション力評価のために非財務情報が重要になってきている。投資家と対話できる長い時間軸、メタ視点でのイノベーション戦略や組織デザインを整えることは、非財務情報見せる化の重要なファクターであり、工夫が求められてこよう。

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日本企業がオープンイノベーションを進めるには その1