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CHROが必要な理由とこれからの人事に求められること

公開日:2023/01/12 更新日:2023/09/14

CFO(最高財務責任者)やCTO(最高技術責任者)とともに、CHRO(最高人事責任者)という役職を設ける企業が現れています。今回はなぜCHROが必要とされるのかを考えてみます。

CHROとは何か、なぜ注目されているのか

CHROとはChief Human Resource Officerの略称で、最高人事責任者を意味します。CHROが人事部長を兼務している場合もあったり、CHROと名乗らず「取締役人事部長」とする企業もあります。

従来の人事部長とCHROの違いは、経営陣として「経営に加わる権限」を持っているかどうかです。

従来の人事部長は人事部の責任者として人材の採用や育成、人事管理に関する業務を統括する役割を担います。経営資産の一つ「ヒト」を統括する立場ではありますが、経営戦略に積極的に関与しているケースは多くなく、決定された戦略に基づいた人事・組織戦略を立てるのが一般的でした。

これに対してCHROは、経営陣の一員として従来の人事分野の責任者の役割を担いながら、経営会議や取締役会に参画することが求められます。そして経営資産の「ヒト・モノ・カネ」を把握しながら人事施策を考え実践します。

CHROを「経営視点と人事視点のふたつを併せ持つ人」「人事の側面から経営戦略を改善する役割の人」「経営のパートナーとして企業を牽引する人事のプロ」などと表現されます。

CHROの必要性が高まっている理由は、各社の人事で「戦略人事」という考え方を取り入れ始めているためです。「戦略人事」は戦略的人的資源管理のことで、これまでのような管理的業務を中心とする部門から、人事も経営戦略の実現を担う戦略部門へと転換し、攻めの人事施策を行う考え方です。

「戦略人事」が出現した背景には、労働人口の減少や人材の流動化の加速などにより、人事に求められる役割が大きく変わっていることが挙げられます。人材と組織の力を最大化し、競争に勝ち抜く企業に変革するための施策が求められていて、その一つが「戦略人事」であると言えます。戦略人事を推進する上で欠かせない重要な存在がCHROです。経営視点と人事視点のふたつを持ち、戦略人事を牽引することが期待できる存在として、CHROに注目が集まっています。

CHROが果たすべき役割

CHROが果たす役割は主に5つあると言えます。

1.人事施策の進捗管理

経営戦略に向けて人事施策の進捗管理をするのは重要な役割の一つです。人材の配置・補充の採用、社員へのエンゲージメントの働きかけ、施策を遅滞なく進めるための体制作りなどです。時には施策現場の声を吸い上げ、経営戦略を改善する役割を担います。

2.社員の育成体系の構築

社員の育成体系の構築も重要な役割です。自社は今後どんな人材が必要になるか、必要な人材をどう育成すればいいか、人材の供給を滞りなくするにはどうしたらいいかなどは経営戦略を実現するうえでも重要です。

3.評価制度の構築

社員への適正な評価の実施は、人材の定着や業績の向上など、戦略の実現につながります。
こうした合理的な評価制度の構築はCHROの重要な役割と言えるでしょう。

4.人事視点から経営をサポート

モノ・カネと同じようにヒトは企業にとって重要な経営資産です。経営戦略の実現に向けて、人材と組織の力を最大限に生かすことができるよう、人事の視点から戦略の策定に進言・提案を行い、経営をサポートすることがCHROの使命です。

5.企業ビジョンや理念の浸透

施策を迅速に進めたり、臨機応変な対応ができるようするためには、社員に企業ビジョンや理念を浸透させることが重要です。その役割は、人材と組織にかかわるCHROが担います。

CHROに求められるスキル

人事施策が机上の空論とならず、実効性の高い戦略を作るためにCHROは「人事分野でのスキル」が最優先で求められます。給与や労務管理などをはじめ、社員の異動や昇進、昇格の手続き、採用活動や教育研修、労務トラブルの対応など幅広く深い知識と経験です。

次に、CHROは経営陣の一員なので「経営戦略を理解するスキル」も求められます。経営陣と同じレベルの理解力によって、人事の側面から経営をサポートすることが求められます。

そして「戦略を策定するスキル」も欠かせません。戦略の策定には、自社の経営戦略と人事施策のアラインメントについての整理や、人事として経営に対してどのような価値を提供できるか、

経営と人材の両面を見ながら、どのような組織を作っていくべきか、組織を構成する人材の質や体制など総合的に検討するスキルが要ります。近年、「戦略人事」を取り入れる企業があるなか、戦略人事の基礎や実践を学ぶ研修が増えています。それらを活用するのも有効でしょう。

CHROだけではない!今後人事に求められること

CHROと戦略人事の出現によって、将来的に人事に求められることを挙げてみます。

人事部門が経営のビジネスパートナー役

戦略人事では「経営戦略の実現を担う戦略部門」や「人事部門も経営のビジネスパートナー役」であるという認識が基本です。戦略を作るところから後方支援まで、人事も主体的に関与していくことが求められるでしょう。まずこの点を認識する必要があります。

「中長期計画」への理解

戦略人事を実行するには、経営の理解が不可欠です。経営戦略と各部門の事業施策の関わりや、施策が戦略に合っているかなどの検証が求められます。そのためには、自社の中長期計画への理解が必要です。 

新規事業・起業の取り組みへの関与

今後は人事も、新規事業や起業の立ち上げなどに積極的に関与していくことが求められるでしょう。例えば、既存市場から新規市場へと事業を拡大する戦略がとられるとします。そのために人事は、新規採用や、既存の社員の教育や異動、組織体制の見直しを行うなど、攻めの人事を行うことになります。

まとめ

CHROや戦略人事という考え方が浸透しはじめるなか、人事の果たす役割は変わりつつあります。目前の人事の実務の中では戦略人事の役割や手法について経験できないとしたら、計画的に外部の学びを活用するのも有効です。その学びが、将来のCHROの育成にもつながります。

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