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DXに必要な人材とは?誰がどんな能力を身につけるべきなのか?

公開日:2022/09/28 更新日:2023/09/14

DXの必要性を感じ、すでに着手しているものの、具体的な事業の変革まで進んでいない企業もあるといいます。DXが実現しない理由の一つに「DX人材」の不足が挙げられます。ここではDXに必要な人材について、また誰がデジタル技術を身につけるべきなのかを紹介します。
DX

DXの本質とは何か?

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称です。スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で「デジタル技術の浸透が、人間の生活のすべての側面に引き起こす変化」と定義されました。

 また、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

つまりDXとは、「業務の効率化を目指して、デジタル技術を導入すること」ではなく「デジタル技術を活用し、競争優位性を確保すること、変革すること」です。

 世界がデジタル化によって成長していく中で、日本は後れを取ってきたと言われています。世界に対して競争力を高めるためにもDX推進が必須なのです。

DX人材」とはどういう人のことか?

DX推進に欠かせない「DX人材」について整理します。

2019年に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行った『「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」において、DX人材として以下の6つの職種が定義されています。

https://solution.jma.or.jp/column/c210107-4/ より再掲

①プロデューサー
DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材

②ビジネスデザイナー
DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材

③アーキテクト
DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材

④データサイエンティスト/AIエンジニア
DXに関するデジタル技術(AIIoT)やデータ解析に精通した人材

⑤UXデザイナー
DXやデジタルビジネスのユーザー向けデザインを担当する人材

⑥エンジニア/プログラマ
上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材

DXというと、どうしても「デジタル人材」に目が向きがちですが、ビジネスを変革するには「デジタルを中心にビジネスをみる視点」を持つ「トランスフォーメーション人材」も重要です。DX推進に求められるスキルセットとして、以下の「トランスフォーメーション人材」と「デジタル人材」に分けることができるでしょう。

トランスフォーメーション人材

次のようなスキルを持つ人で、IPAの定義におけるDX人材の①②に当てはまります。

  • 課題発見・ビジネスモデルや業務の設計
  • 組織変革
  • 業務変革
  • プロジェクト管理

デジタル人材

次のようなスキルを持つ人で、IPAの定義でいうDX人材の③④⑤⑥に当てはまります。

  • データを解析する
  • デジタル技術に精通している
  • システムの設定・開発・実装をおこなう

デジタル人材に求められる能力とは

「デジタル人材」には以下のような能力・スキルが求められます。

データサイエンス

データを見るためには統計学的な基礎知識が必要でしょう。データを活用するためにビジネスの構造を知っておくことも重要です。

プログラミング

デジタルシステムを使いこなすスキルやシステムを実装するスキルです。ソフトウェアだけでなく、ハードウェアを含めた幅広い知識が求められることもあります。

UXデザイン

サービスの利用者が理解しやすく使いやすい、デザインを作るために必要なスキルです。デザインを具体的に実現するため、DX推進に関係者に理解を求める「言語化力」も重要でしょう。

システム設計

DXを実現させるために、課題の分析、要件定義に始まり、設計・開発サポートまで行います。デジタル技術以外にも経営的視点も必要です。

その他先端技術 など

AI(人工知能)、機械学習、ディープランニングなど最先端のデジタル技術に精通しているとよいでしょう。

誰が「デジタル人材」としての力をつけるべきか 

DX推進担当者、リーダーの立場にある人は、前項にてご紹介した「デジタル人材に求められる能力」について基礎を理解しておく必要はあるでしょう。

「トランスフォーメーション人材」に求められる能力とは?

続いて、「トランスフォーメーション人材」に求められる能力を紹介します。事業の変革を行うためには以下のような能力が必要です。

課題発見/設定力

事業の変革を行うために、自社の課題を発見、設定し変革の対象を決めることが必要です。設定した課題に誤りがあれば、デジタル技術を使いこなしても価値は生まれません。正しく課題を設定し、DXの筋道を立てることが大事です。

構想力

DX推進に向けて具体的に企画を立案する力です。ビジネスの将来像を描き、変化に目を向け、時代を先読みする力が必要です。企画をもとに、実際のビジネスモデル、ビジネススキームを構築していく能力も求められます。

巻き込み力

DXは組織横断で取り組むケースが多いため、まわりを巻き込む力が求められます。相手の意見を聞き、互いに尊重し合い調整する能力、関係者を巻き込みながら協力者を集める能力も必要です。

変革のためのリーダーシップ

変革には困難や失敗がつきものです。一時的な失敗を恐れずに失敗を糧にして前に進む姿勢や、困難な状況から抜け出す方法を模索し突破するリーダーシップが求められます。

その他基本的なデジタルリテラシー

当然ながら基本的なデジタルリテラシーは必要です。直接的にデジタル技術を利用することはなくても、デジタル関連の知見、トレンドを見る力が求められます。技術と事業の掛け合わせをした時に起きる課題、コスト、効果について言及する能力が必要です。

誰が「トランスフォーメーション人材」としての力をつけるべきか

「トランスフォーメーション人材」としての力がとくに問われるのは、経営者・経営幹部、DX推進担当者・リーダーです。

経営者・経営幹部

DXがうまくいかないケースの一つが、経営層が「DXとは業務の効率化やデジタルツールによるコスト削減などによるIT化のことだ」と誤解している場合です。この場合、DXの取り組み全体が正しい方向に進みません。経営層はDXの本質を理解し、DXを単体としてではなく、経営戦略の一部として捉えることが必要です。

DX推進には、企業文化や組織の変革が求められるため、反対意見が出ることも想定されます。そのためにも、経営層が主体となり、強い意思決定のもとで進めていかなければなりません。

DX推進担当者・リーダー

DX推進には、変革を推進するリーダーが必要です。DX推進担当者・リーダーには、経営層と現場のギャップを埋めるためコミュニケーションのとれる体制作りも求められます。まずは、事業戦略レベルでDXを構想するための視点、視座を習得するために、DXの本質を理解しておく必要があるでしょう。

「トランスフォーメーション人材」は、DXに不可欠であるにも関わらず見落とされがちな存在です。DXを推進するには、こうした人材の育成についても改めて検討することをおすすめします。

●関連情報

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