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DXを前進させる方法を、組織や人材の視点から考える

公開日:2022/05/19 更新日:2023/09/14

ビジネス環境の変化に伴いDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急がれている中、なかなか思うように進まない企業も多いのが現実です。ここでは、組織や人材の観点から、DXを前進させるために必要なポイントを考えてみましょう。

DX人材

日本でのDXはあまり進んでいない

20216月、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、企業がDXの現状や実態について自己診断した結果を集計した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」
2020年版 https://www.ipa.go.jp/files/000091505.pdf)を公表しました。

このレポートによると、DXに取り組んでいる企業の中で約7割が「全社戦略が明確ではなく散発的な実施にとどまっている」と回答しています。つまり日本では、「DXを実施したもののほとんど手応えを感じていない、DXはあまり進んでいない」という企業が多いといえます。

DXが進まない理由として一般的に考えられること

日本でDXが進まない理由としては、大きく次のような要因が考えられています。

経営陣の認識のズレ

DXの前進のためには、「DXによってどんなことを成し遂げたいか」という経営戦略やビジョンが明確になっていることが大切です。しかしながら経営陣の認識が、「DX=企業の活動をデジタル化すること」とDX自体をゴールと捉えているケースもあります。 

経営陣がこのような認識でいると、社員もDXの目的を誤解したまま取り組むことになり、あるべきDXは前進しません。

社内浸透が困難

社内の既存の業務をデジタル化するためには、情報システムの一元化が不可欠です。しかし各部署がそれぞれ独自のシステムを運用している場合、一元化には業務フローの変更が必要なケースも多く、時間や労力、莫大なコストがかかります。組織が大きいほど部署間の調整が必要なため、社内浸透が困難になりがちです。

DX人材不足

DX推進には、DXに対応できる人材が必要です。しかしながら初めてDXを進める企業においては、プロジェクトをまとめるDXマネージャーが不在であるケースも多々あります。そもそも日本では、ITエンジニアの不足もDX推進が行き詰まる要因となっています。

マネジメントと現場、部門と部門の間の溝

とくに大企業では一人ひとりの業務が細分化されているため、経営陣が策定した経営戦略やビジョンが自らの仕事につながりにくく、マネジメントと現場、部門と部門の間の溝が大きくなりやすいと言われます。溝が大きいほど連携がうまくいかずDXは進みません。そもそも部門間の溝やギャップに気づいていないことも問題といえるでしょう。

ユーザー企業、ベンダー企業それぞれがジレンマを抱えている

経済産業省の「DXレポート2.1」によれば、既存産業の企業がデジタル産業の企業へと変革していくうえで、ユーザー企業(システム利用者)には2つ、ベンダー企業(システム提供者)には3つのジレンマが存在し、DXが進まない原因となっているとされています。

ユーザー企業・ベンダー企業の両方に言えること

危機感のジレンマ
→目先の業績が好調のため変革に対する危機感がない
→危機感が高まったときはすでに変革に必要な投資体力を失っている

人材育成のジレンマ
→技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには古い技術となっている
→即座に新技術を獲得できる人材は引き抜かれてしまう

ベンダー企業にのみ言えること

ビジネスのジレンマ
→受託型ビジネスを現業とするベンダー企業が、ユーザー企業のデジタル変革を伴走・支援する企業へと変革しようとすると、内製化への移行により、受託型ビジネスと比べて売上規模が縮小する
→ベンダー企業がユーザー企業をデジタル企業へ移行する支援を行うことにより、最終的には自分たちが不要になってしまう

出典;https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210831005/20210831005-1.pdf

 これらのジレンマを打破するためには、企業経営者のビジョンとコミットメントが必要不可欠とされています。

日本特有の事情から考える

DXが進まない理由として、日本人の特性を要因として指摘する声もあります。

リスクの許容度が低い

日本は不確実性回避度が高く、リスクの許容度が低い傾向にあるといわれます。DX推進は企業にとって新しいチャレンジとなるため、どうしても不確実性が伴い、DXを受け入れられない社員が出てきやすいかもしれません。

組織内の権力の格差が大きい

日本特有の年功序列制度は崩れつつあるものの、まだまだフラットな組織にはほど遠く、上司が部下に指示を出す階層構造になっている組織が多いものです。階層構造の組織では、部下から上司に対して発言することは簡単ではありません。上司がDX推進に積極的でなければ、DXの前進は難しいかもしれません。

多様性がない

海外の企業に比べると日本企業は社員の日本人構成比率が高いため、多様性を実感できる機会が少ない状態です。多様性の進んだ組織はイノベーションが起こりやすいと言われていますが、そういう意味で、日本企業ではDXのように企業変革を起こすイノベーションはまだ起きにくいとも言えます。

組織や人材の観点からDXを推進するには?

DXを前進させるためにはDX自体をゴールとして捉えるのではなく、DX推進の阻害要因となっている課題を改善していくことが重要です。ここまで見てきたような課題をもとに、組織や人材の観点から、DX推進に向けた改善ポイントを考えてみましょう。

経営者のビジョンとコミットメント

目の前の仕事が忙しいと、新しい挑戦を避けがちですが、それでは変革はできません。まずは経営者自身が、ネガティブな意見に対して「それでもDXを進めるべき」という意志をしっかり示すことが必要です。

リスク許容度が低いメンバーを引っ張れるリーダーの育成

DX推進には不確実性が伴います。そんな中で、リスク許容度が低いメンバーを引っ張れるリーダー育成が必要です。「成功のためにはリスクを取ることは厭わない」というのも一つのリーダシップではありますが、この場合には、メンバーの気持ちに寄り添って導けるタイプのリーダーが求められるといえます。

ミドルマネージャーの再教育

日本企業のミドルマネージャーのなかには、優秀であっても上のポジションが詰まっていて昇進できないなどの理由から、閉塞感を覚える人も多いと言われています。こうした閉塞感が視野を狭めることもあるため、そうならないための意識改革が必要です。DX人材育成のサポート役という意味でも、ミドルマネージャー自身の再教育が早急に必要と言えるでしょう。

 心理的安全性の高い組織づくり

イノベーションを促すために、突然「上司部下関係なく意見を出し合おう」と決めても、それだけでうまくいくことは少ないでしょう。誰もが安心して発言できる、アイデアを出せる、心理的安全性の高い組織づくりが必要です。

多様性の確保

DX推進は企業変革を起こすイノベーションとも言われます。そこで、イノベーションが起きやすい環境として組織に多様性を作り出すことも重要です。

DXを導入したもののうまくいっていない場合は、まずは進まない要因を探ってみましょう。今後企業が生き残っていくために、DXの前進は必要不可欠ですが。まずは既存の人材を育成し、組織を変えていくこともDXを進める一歩となるはずです。

まとめに変えて

日本企業でDXが思うように進んでいない現状と、その原因を確認し組織や人材の観点からDX推進のために出来る施策についてご紹介してまいりました
JMAでは、各社のDX推進支援を行うべく、特に「トランスフォーメーション人材」育成のプログラム及び、DX実現に向けて多くのビジネスパーソンに必要となってくる、思考力やITスキルなどのリテラシーに関して、数多くのラインナップを取り揃えます。
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●関連情報

DX推進プログラム特設ページ