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ダイバーシティ&インクルージョン研修とは?

公開日:2021/03/30 更新日:2023/09/14

労働人口の減少やグローバル化、多様化するニーズへの対応に向けて、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業が増えています。今回は、女性活躍推進の取り組みやLGBTQへの対応など、企業組織の多様性の実現に向けたダイバーシティ&インクルージョンの学びについて紹介します。

ダイバーシティ

「ダイバーシティ」はなぜ必要なのか?

ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味です。企業でのダイバーシティは、性別や年齢、国籍、経歴や働き方など多様な人材を受け入れるだけではなく、積極的に採用し、新たな価値を創造して企業の競争力に繋げるための成長戦略といえます。

近年では、「ダイバーシティ&インクルージョン」と2つの概念がセットで扱われることが多く、頭文字を取ってD &Iとも呼ばれています。インクルージョンとは「受容」という意味で、社員がお互いを認め合いながら違いを活かしている状態。よって企業におけるダイバーシティ&インクルージョンとは、社員が多様性を受け入れながら、そこに含まれる違いを、競争優位に活かそうとする取り組みを意味しています。

海外では、ダイバーシティは経営戦略の中でも重要なものとして、1960年代から認識されていました。一方、日本でダイバーシティが注目されるようになったのは、2000年に入ってからのことです。働く個人の人権を尊重する動きとして、また少子高齢化に伴う労働力確保に向けた解決案として、それまでマイノリティとして主たる労働力とはみなされてこなかった、女性や障がい者、外国人の雇用を重要視する企業が増加したことがきっかけです。

日本企業にとってダイバーシティが必要な理由としては、下記のような点が考えられています。

一つ目は、人口減少による国内のマーケットが縮小する中で、マーケット拡大のためにはグローバル化が不可欠であることです。グローバル化を目指すには、多様な年齢、性別、人種、働き方に加え、さまざまなパーソナリティ・価値観・信条・経歴を持った社員が一緒に在籍できるほうが有利であり、そのための対応が求められます。

二つ目は、不確実性の高い環境下においてイノベーション創出が求められていることです。顧客に新しい価値提供するためは、これまで社内になかったさまざまな視点が必要で、それぞれの強みが発揮されることでイノベーションが起き、経営成果につながるとされます。ダイバーシティは問題を解決するためではなく、個々の「強み」を活かすために必要なのです。

三つ目は、ダイバーシティ&インクルージョンの概念はSDGsの項目にも入っていて、これに取り組んでいるかどうかは投資家からも注目されているということです。ダイバーシティ&インクルージョンは今や、資金調達のためにも欠かせない取り組みと言えるでしょう。多様な人材が活躍できる制度・組織風土の有無は、採用市場でも問われています。今や働き手もそのような視点で企業を選んでおり、社員のコミットを得るためにも重要な事項です。

どんな立場の人がどのようなことを学ぶと効果的なのか?

経営計画の中に「ダイバーシティ推進」や、その第一歩として「女性活躍推進」を掲げている企業が増えてきています。社内での浸透・実現策の1つとして、さまざまな人にとって学ぶメリットがありますが、ここでは4つの立場に分けて紹介します。

マネジメント層

マネジメント層の役割は、多様性を活かす組織を機能させることです。時代背景や、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することのメリットとそれへ向けての管理職の役割、個々のメンバーの特性理解、組織内での信頼関係構築・育成・業務配分の進め方などを学びます。

人事部門

社内の「ダイバーシティ推進」を実現するために、人事部門として知っておきたい働き方改革における働き方多様化の対応、組織風土づくりをけん引する立場として学びます。企業に求められる取り組みを理解しながら、労働環境・制度を充実させ、従業員からの相談に対処
できるよう準備します。

ロールモデルの少ない立場の人

たとえば女性の少ない組織における女性管理職候補にあたる人など、これまで以上の活躍が期待される人も、個性や属性をふまえた自身を活かすため、キャリアの方向性を考え、自らステップアップする方法を学んでおくほうがよいでしょう。社内にロールモデルが少なく、また社内上司に育成の経験値が少ない場合は、キャリア開発への動機づけのために外部講師が研修に関与したほうがよい場合もあるでしょぅ。研修を通じて、組織をこえた横のつながりが生まれるという効果もあります。

一般社員

どんな社員であっても、広い意味では異なる価値観・個性を持ったダイバーシティ&インクルージョンの当事者です。「働き方や考え方の違いを越えて互いを認め尊重する」という組織風土づくりの観点から、ダイバーシティ&インクルージョンを会社全体に浸透させるためにも学ぶ意義があるでしょう。具体的な学習内容としては、ダイバーシティ&インクルージョンの組織へのメリット、当事者意識をもつこと、信頼関係・生産性のある職場づくりのためにできることなどが考えられます。

どの層にとっても共通して重要なのは、失敗や対立を恐れることなく多様な意見・あり方が尊重される状態、つまり「心理的安全性」という考え方を理解することです。

ダイバーシティ&インクルージョンを学ぶことは企業にどのような影響をもたらすのか?

人材の流動化が加速する中で、優秀人材の維持・獲得のための魅力的な職場整備は、多くの企業が直面している課題でもあります。
さらに新型コロナウイルス感染症の拡大以降、ダイバーシティ&インクルージョンに向けての動きが加速していると言われています。事業環境の大きな変化に対し、製品・サービスやそのプロセスのイノベーションが求められているからです。
従来日本で考えられてきた「労働力確保」という目的のためだけでなく、企業の競争力を高めるためにも、個々の「強み」を活かすダイバーシティについて学ぶ意義があると言えるでしょう。

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