コラムcolumn

コロナ禍で注目を集める「ワーケーション」の効用と課題

新型コロナウィルス感染症の影響が、在宅勤務をはじめとしたテレワークの推進を加速させています。その中で新しい働き方として「ワーケーション」が注目されてきています。今回は「ワーケーション」の効用と導入する上での課題について紹介します。

ワーケーションとは何か~欧米での意味、日本での使われ方

ワーケーションとは2010年前後に欧米で誕生した、ワーク(work)とバケーション(vacation)を組み合わせた造語です。欧米発のワーケーションは、数週間〜数ヶ月のバケーションを楽しみながら、合間に仕事を組み込む休暇がメインのスタイルです。欧米では休暇を大切にするため、休暇に仕事を持ち込むことは敬遠されますが、多忙なビジネスマンの間で「休暇中に家族と過ごしながら、仕事をするスタイル」としてワーケーションが使われるようになりました。

日本でも2019年頃からワーケーションという言葉を目にするようになり、新型コロナウィルス感染症の影響で一気に注目が集まりました。ワーケーションにはいくつかの種類が存在しますが、欧米と比べ長期休暇が取りづらい日本では、ワーケーションは「普段とは異なる土地で仕事をする」というような、労働メインのイメージが強くなっています。

ワーケーションの効用とされている点

新型コロナウィルス感染症をきっかけに在宅勤務、リモートワークが加速しましたが、同時に「社会的孤独」を感じる人が増えたと言われています。そこで、仕事の生産性を保ちながら心身の健康の向上に寄与するとして「ワーケーション」が注目されています。

2020年7月に株式会社NTTデータ経営研究所が「ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康の向上に寄与する ワーケーションの効果検証を目的とした実証実験」を発表しています。

実験を通じて検証されたのは、ワーケーションが仕事の生産性をあげ、心身の健康にプラスになるということでした。たとえば下記のような点が指摘されています。

  • ワーケーションは表面的には仕事とプライベートが混ざる取り組みですが、実際には公私を分けるメリハリがついた
  • ワーケーションを許可してくれた会社に対して帰属意識が反映され、組織コミットメントが向上した
  • 活気が上がり、不安感が低減するなど心身のストレスが低減した
  • 歩数が増え、活動量の増加に繋がった

ワーケーションのいろいろ

現在のところ、日本で考えられているワーケーションは大きく2つに分類されます。

1.休日型ワーケーション

休暇中に、旅先でついでに仕事をするという働き方です。中心となるのは休暇です。

2.平日型ワーケーション

業務時間内に出張先や旅先で仕事をする働き方です。中心となるのは仕事です。

その他、ワーケーションを実施する場所に着目した分類もあります。

1.リゾート型ワーケーション

リゾート地などに通信環境を整えたサテライトオフィスを設けてテレワークを行うという働き方です。

2.都市型ワーケーション

距離的には都市部に近いエリアで、いつもの勤務環境とは違う環境で働く働き方です。

現状では、自宅・職場から遠い観光地に移動すると時間と費用面でのデメリットが発生すること、また、コロナ禍環境においては長時間の移動がリスクを伴うことなどから、都市型ワーケーションが注目されています。

地方創生の観点からも注目されている

地方の過疎化、地方と都市の格差の原因の一つに、その地域に存在する「仕事」の有無が挙げられます。「ワーケーション」はこうした問題を解消し、「地方に仕事を生み出す」ための取り組みとして、地方創生の観点からも注目されています。労働者が地方に数日滞在することで宿泊費や飲食費がその地域に入りますし、都市の労働者と地域住民の繋がりができることで、将来的な多拠点生活、移住地の候補へ繋がることが期待されています。

地域がワーケーションに取り組むには、まず受け入れ側の準備が必要です。単なる観光目的のために過ごす宿泊施設ではなく、仕事をするためのワーキングスペース・環境が必要になります。また、長期滞在しやすい料金体系、食べる場所・過ごす場所というように「ワーケーションをしたい」と思ってもらうための体制作りが必要です。地域全体がワーケーションしやすい、過ごしやすい「場所」であるためには、地域の協力もがあることも重要なポイントといえます。

ワーケーションを導入する上でクリアするべき課題

ワーケーションの導入にあたっては、企業側やその従業員側にもさまざまな課題があります。

企業側の課題

コロナ禍でワーケーション導入のハードルが下がったものの、導入に対して消極的な企業もまだまだあります。旅先までの移動費や宿泊費用、テレワークの通信環境の整備など企業側の費用負担があるためです。

また、企業によって差はあるものの、これまでオフィスで週5日×8時間働くことが当たり前とされていたことによる企業側の不安もあります。それは、従業員を管理できないことです。会社の目の届かないところで従業員が集中して仕事に取り組んで入るかどうかが把握しづらく、仕事の生産性が下がるのではないかという不安が生まれます。

従業員側の課題

従業員側には「ワーケーション」の導入に対して「休み中に仕事をしたくない」「せっかくの休日に上司の顔を見たくない」「出張と旅行は完全に分けて考えたい」というような否定的な意見があります。先ほどNTTデータ経営研究所のワーケーションにおける効果を紹介しましたが、それ以前に「新しい働き方を受け入れられない」という人も一定数存在しているのです。

企業側、従業員側ともにワーケーションという働き方を受け入れられていない状況では、必要な取り組みだからと急いで導入しても失敗に終わりかねません。そのため、ワーケーション導入前に、導入を前提とした制度やルール作りが必要です。業務の進め方、有給休暇の取り方や、休暇と労働時間を明確に把握できる仕組みをつくるなど、企業・従業員の不安を少しでも減らすことが求められます。

ワーケーションは単にコロナ禍を乗り越えるための働き方ではありません。「働き方改革」に向けたライフとワークのバランスを取るための取り組みの一つと言えるでしょう。これからの少子高齢化が進む日本にとって、従来の働き方の見直しが早急に求められています。この機会に「ワーケーション」という働き方を検討してみるのはいかがでしょう。