失敗しない研修計画

志と決断力のあるリーダーをつくる「役員研修」のポイント

公開日:2023/08/31 更新日:2023/09/13

役員に就任するからには、すでに社内で十分な実績を残している方が多いはずです。とはいえ、管理職であれば自分が担当している業務を最適化し、遂行することが任務であったところ、役員になると会社全体を見渡す広い視野が求められ、経営陣の一人として影響を与える立場に変わります。役員の能力は企業の成長に直結するため、しっかりレベルを上げておくことが不可欠です。ここでは、志と決断力のあるリーダーをつくるための役員研修のポイントをお伝えします。

役員に求められる能力とは?

まずは一般的に役員に求められる5つの能力を紹介します。

1.社会をより良くするという明確な信念と高い志

現在、経営環境はVUCA(Volatility・変動性、Uncertainty・不確実性、Complexity・複雑性、Ambiguity・曖昧性)時代と言われています。経営環境の変化に迅速に対応するために、役員に求められるのは、社会をより良くするという明確な信念と高い志です。時代の変化に流されないためにも、自分自身の明確な信念が必要なのです。

「社会をどのようにより良くしたいのか」「自社は社会においてどんな存在でありたいのか」「持続可能な社会を実現するための自社のミッションはこうあるべき」など、明確な信念と高い志があることが、より迅速な決断・実行に繋がります。

2.洞察力と多面的視座

洞察力とは「物事の性質や原因を本質から推察する力」です。役員にこうした力が必要なのは、経営課題の根本的な原因を見つけ、戦略的対策を行い、本質的に解決することが求められるからです。

さらに、洞察力とあわせて必要なのが多面的視座です。視座とは「物事を見る姿勢や立場」と定義されますが、「経営者の視座」「現場の視座」「顧客の視座」「社会の視座」というように、あらゆる面から物事を見る姿勢が役員には求められます。 

アメリカの経営学者でハーバード大学の元教授のロバート・リー・カッツ氏により提唱された「カッツモデル」では、マネジメントの階層による要求スキルの変化が、上位から順に「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」として説明されました。 

このうち、トップマネジメントに特に求められるコンセプチュアルスキルは、複雑な事象を概念化して多面的に捉えて共通の本質を見抜くスキルであり、洞察力と多面的視座はここに該当すると考えられるでしょう。 

洞察力と多面的視座により社内外の現状把握を行い、将来の事業の変化、未来の変化に対して将来の動向を予想することで、競合に対しても先行した動きを取ることができるのです。

3.倫理観と人間的な魅力

企業活動において、高い利益を追求するあまり製品・サービスの品質やコンプライアンスを疎かにしてしまうと、不祥事の発生など企業の存続自体が危うくなることも少なくありません。役員に高い倫理観が必要なのはこのためです。効率や利益はもちろん大切ですが、安全性や顧客満足度などを最優先に考える必要があります。

 また、「最終的には“人”」とはよく言われることですが、それほどに人間的な魅力も重要です。人間的な魅力は、従業員から「この人について行きたい」と思われる求心力に繋がります。敢えてスキルに分解するならば、コミュニケーション能力、ヒアリング力、交渉力などのほか、根回し力などのヒューマンスキルが含まれるでしょう。 

役員になると社外、社会との繋がりやり取りも増えるため、視野を広げなければいけません。そのためには、異業種の経営者・役員との人的ネットワーク、人脈作りも重要です。倫理観と人間的な魅力を備えていることは、他の経営者との円滑な関係性を築くのにも役立ちます。

4.組織を率いるリーダーシップ

役員自ら明確な信念と高い志を発信することで、従業員に想いを伝えることができます。と同時に、より多くの従業員の共感を得るためには、従業員の立場に立った「従業員の視座」も必要です。「明確な信念と高い志」については前述の「1.社会をより良くするという明確な信念と高い志」の項目でも触れましましたが、それが従業員のモチベーションを上げるものであれば、求心力が生まれます。

求心力ができることで、組織を率いるリーダーシップを強力に発揮することができます。また、「3.倫理観と人間的な魅力」もリーダーシップの前提となる要素だと考えられます。

5.未踏課題における挑戦

ビジネスや社会における未踏の課題解決に立ち向かうことは、容易ではありませんが、そこに挑戦する姿勢が役員には求められます。挑戦をする過程においては、不確実性の高い環境の中で向かい風の状況下に立たされても、誰も成し遂げていないことを実行し抜く、ネガティブ・ケイパビリティも必要です。

役員に求められる能力を身につける学び方のポイント

役員就任時には、これまでの管理職としての考えとは異なる、経営者としての自覚・考え方・行動へのスパイラルアップが必要です。

役員研修ではこの課題を達成するために、専門家から経営知識を座学や演習形式で学ぶほか、実際の経営者からの講演も組み合わせることが有効です。「経営層としての在り方」や「修羅場での意思決定行動」を追体験して学ぶことができるためです。

また、役員研修のプログラム内容の検討にあたっては、事前に自社の課題を明確にし、研修の目的、役員が何を身につけるべきなのかを明確にしておきましょう。 

上記に役員に求められる能力5つをお伝えしましたが、「今、会社がどういう状態なのか」「そこに足りていないことは何か」「それを埋めるために役員が身につけるべきことは何か」など、会社の置かれている状況や抱えている課題を洗い出し、必要な内容をカスタマイズするとよいでしょう。 

一般的に、他の階層での研修では、研修後に社内で上司からのフィードバックの機会を設けることができますが、役員になると社内でのフィードバックの機会は減っていきます。そこで、定期的なフォローアップ研修を活用することも効果的です。

JMAがご提案する役員研修の例

上記のような能力や資質を養うため、JMAではさまざまな役員研修メニューをご用意しています。いずれも、豊富な事例やディスカッション、成功した経営者の体験談などを交えて多角的に学ぶことができ、企業の課題に応じたカスタマイズも可能です。詳しくはぜひお問い合わせください。

役員のためのコーポレートガバナンス・法務

企業が「社会の公器」としての役割を問われる現代において社会的責任を果たすため、有効にガバナンスを機能させるための考え方や、ステークホルダーへの説明責任を果たしながら企業価値を向上させるための行動、そのために必要な法務や企業統治について学びます。

https://solution.jma.or.jp/service/training/position/position1_1/

役員のための経営戦略

経営戦略の策定、実行、評価において、トップマネジメントに求められる視点と行動を、総合的に学習。企業の全体最適、将来最適を見据えながら経営資源の配分と有効活用を考え、決断する見識と判断力、責任感を養います。

https://solution.jma.or.jp/service/training/position/position1_2/

役員のための財務・会計

社会に対して企業の状況を説明するための世界共通言語である企業会計について。専門家でなくても理解し、活用できる必須知識を提供します。財務戦略と経営戦略との相関、企業価値創造、経営リスクの考え方、事業投資の意思決定、M&Aなど、役員に必須の知識が学べます。

https://solution.jma.or.jp/service/training/position/position1_3/

役員のための組織・人材革新

企業価値を挙げるために必要な戦略的な人事や人材開発、組織づくりと、そのために必要な視点や行動について学びます。さらに、組織・風土改革と業績向上を実現した経営者の体験を通じて考察を深めます。

https://solution.jma.or.jp/service/training/position/position1_4/

 役員のための意思決定

不確実な状況下で「意思決定」を行うことはトップマネジメントの重要な仕事の一つ。であると言っても過言ではありません。「質の高い意思決定」を行うために、そのメカニズムや陥りやすい罠、意思決定の方法論について学びます。

https://solution.jma.or.jp/service/training/position/position1_5/

まとめ

今回は、志と決断力のあるリーダーをつくる「役員研修」のポイントと題し、役員研修を失敗させないための要点と、実際の研修例をご紹介しました。

役員の戦略的育成は業績に直結する経営課題です。最大限に役員研修の成果を挙げるためにも、自社の課題に照らし合わせてカスタマイズしながら組み立てられる研修を検討してみてはいかがでしょうか。