東洋大学【大学職員の教育体系】

JMAでは大学向け職員研修も数多くご支援し、学校職員特有の業務、制度、背景に合わせた研修設計や、講義・教材のご提供に評価をいただいています。

「グローバル化」「ミドルマネジメント育成」など企業とも共通する人材育成課題を背景に、階層別教育体系の整備に取り組まれ、JMAの研修を利用いただいている 東洋大学人事部長の笠原喜明様と人事部人事課主任 坂口綾子様にお話を聞かせていただきました。聞き手はJMA(日本能率協会)山川真貴子です。

“平均点の高さ”で勝負する

(山川)
本日はありがとうございます。早速ですが、お二人の人事部の中でのお役割をお伺いできますか。

(笠原)
今年度の4月から総務部の中にあった人事課が人事部として独立しました。この何年間か人事の仕事のボリュームは増え続けていますし、経費の半分以上が人件費というように、大学が「人で成り立っている」ことを考えると、「人事部」として独立していいのではないかとずっと思っていたんです。役員の理解もあり、独立することになりました。

P1030630「人事部」を英訳すると、「HR(ヒューマンリソース)」と訳されることが多いわけですが、その割には、これまでの人事課はヒューマンリソースの部分にあまり重きを置いてこなかった。人事業務では、採用から退職、給与や福利厚生などが基本となる業務ですが、プラスして人材育成にもっと注力していくべきであろうというのが、ここ何年間かの私の重点テーマの一つでした。

私は人事部長なので、もちろん人事部の業務全般をマネジメントするわけですが、人事部の今の仕事量と管理職の数からすると、すべてを均一に見るには限度がある。それで、私の下にいる次長(兼課長)と分担し、基本的な業務は主に次長に担当してもらい、育成という新しい分野については、私のほうが中心にやっています。

(山川)
今回、いくつかの研修を担当させていただくにあたって、研修体系表を拝見しましたが、あの体系表は昨年くらいに完成されたのでしょうか。

(笠原)
そうですね、あの形にしたのは昨年度からですが、その中のいくつかの研修(主に役職者研修)は、その3年くらい前に人事評価制度を入れた際、評価の項目と合わせる形で内容を検討し、体系を組んだものです。それが研修体系整備の第一段階でした。
今回が第二段階で、これで必要な研修をほぼ取り入れるところまで来たと思っています。

(山川)
入職されたときから上級管理職まで、すごく丁寧に充実した研修体系を作っていらっしゃいますが、人事評価制度の導入と合わせて、ポイントポイントで実施されていたのを、結びつけるように作り込まれたということでしょうか。

(笠原)
おっしゃる通りです。新卒1年目から10年目まで、役職別では最初の主任から最上位の部長まで、各役職別に細かく、長期間にわたる研修体系を組んでいます。

他の大学の方とお互いの事務局の事情について話をしていて感じるのは、もし東洋大学の事務局の強みをあげるとすると、それは「職員全員の平均点の高さ」なのではないかということです。東洋大学の職員の数は、学生数と比べるとそんなに多くはありません。一方、大学の活動はというと、他の大学に比べて変化の激しい大学、攻めている大学の一つと言えると思っています。そういう大学の施策を、決して多くない数の職員で推し進めている

エリートと呼ばれるような一部の職員の強さで回っている大学事務局であれば、その一部の人たちがいなくなると困るし、その人に代わる人を育成しなければいけないわけですが、東洋大学の場合には平均点の高さを武器として、全体を運営しているので、継続性に強みがある。そのため研修体系を考えるときも、「分厚い中間層」の育成を心がけています

具体的には、以前は入職後1年目の職員向けの研修だけでしたが、徐々に充実させて、5年目を追加し、2年目・3年目を追加し、さらに9年目・10年目を追加しと、10年目まできちんとフォローする体制にしました。10年目まではさまざまな手法で人事部としてフォローをするので、その間に中間層を構成できる、そういう職員に成長してほしいと思っています。そうなることが、職場において自分が活躍できるフィールドを確保することにもなるので。また役職別では、主任から課長までの役職の昇格初年度だけやっていた研修に加え、課長補佐2年目、課長2年目、部長・次長の上級管理職向けの研修も充実させていきました。

「大学」に特化した研修をやる意義

(山川)
今回、小会で担当させていただいたのは、「新主任研修」「課長補佐(2年目)研修」「新課長研修」「課長(2年目)研修」「上級管理職研修」の5種類でした。

これらは入職後11年以上の職員が対象になるものかと思いますが、改めて、今回ご依頼をいただいたテーマとその背景・ねらいをお伺いできますか。

(笠原)
新卒入職後に、まず大学職員としてのベースを作らなければいけないということで、1年目から10年目まで研修を行います。これらは主に学内のリソースを活用して運営していて、それなりの成果を感じています。一方、人材育成の仕事に関わってきたここ何年間かで、東洋大学の事務局の育成で後手を踏んでいると強く感じるものが二つあり、一つはグローバル化に対応する職員の育成、そしてもう一つが管理職、特に課長のマネジメント力の育成です。

国際化については、現在ある程度、体系を組んで実施しているのですが、管理職の研修は簡単ではありません。既に何十年ものキャリアを積んできている方々ですから、研修での話を素直に受けとめることが難しいのではないか。課長、次長、部長と役職が上がれば上がるほど、多くの場合、自分の仕事に対する自負やこだわりが強くなり、内部の者の話は素直に受け入れにくくなる。そうなると、やっぱり外部の講師から話をしていただいたほうがよいだろうということで、それで今は主任職より上の研修を日本能率協会さんにお願いしています。

P1030625(山川)
外部に講師を依頼するというときに、他の教育会社ではなく小会にお話をいただいたのはなぜでしょう。

(笠原)
昨年度までは、「主任研修」も「課長補佐研修」も、別のコンサルタント会社にお願いしていたんです。内容は良かったのですが、それぞれの研修を別の会社が担当したので、一貫性に問題がありました

また、一般的な管理職という立場のマネジメントに関する研修とは別に、やはり大学に関する知識・事例を研修で取り上げ、それらを共通言語として全管理職が知っている状況を作りたいという狙いもありました。そうなると、今まで委託していた会社の得意分野ではない。特に今年度の上級管理職研修で実施したような高等教育政策の専門家や実務家の方の講演のアレンジは難しいですよね。それであれば、「大学」に知見のある日本能率協会さんにお願いするのが良いと思った次第です。

(山川)
いろいろな大学に研修を提供させていただいていて、主任~課長層ぐらいの研修は多いですが、今回導入いただいたような上級管理職向けの、専門家や大学の実務家を講師に招いて、そこから自学について自分たちでディスカッションしていくというものを実施されているところは少ないのかなと思います。そこに今回の企画のポイントがあるのでしょうか。

(笠原)
1年目から10年目の研修の中には、高等教育に限定した話とか、本学の業務に限定した話というのを、ところどころ入れています。一方、私たちの役職者研修の体系を概略的に見ると、上級管理職研修を除けば内容的には大学事務局の研修なのか一般企業の研修なのかわからない、つまり高等教育に特化していないと思います。しかし、やはり大学職員の研修なので、部長、次長といった上級管理職は、最低限の高等教育の動向や他大学の情報は持っているべきであり、それについて議論できる水準にいなければいけないということで、日本能率協会さんに全面的に協力していただく形で上級管理職研修を企画しました。

人事部に余力があればという前提ですが、一般的な知識・スキルの習得を目的とする現在の研修体系のほかに、高等教育関連の情報・知識に特化した形で、もう1つ体系があってもいいと思っているくらいです。残念ながら、まだそこまでの余力はありません(笑)。

研修担当者として助けられた”サポート”とは

(山川)
今年、小会としては初めて研修でお手伝いをさせていただいたのですが、ほぼ1年間お付き合いさせていただいた中でのご感想といいますか、JMAの良かったところや、もっとこういうことを期待したいというようなところも含めてお伺いできればと思います。

(笠原)
まず、「上級管理職研修」で招いていただいた専門家の先生、実務家の方々に関して言うと、非常に良いチョイスをしていただいたと思っています。面白かったです。
「主任研修」、「課長補佐研修」、「課長研修」については、全員が非常に当たりの柔らかい感じの講師でした。受講者からの評価は皆さん高かったのですが、ガツンとした物言いをする講師が1人ぐらいいても面白い。年次ごとに受けていく研修なので、毎回、ソフトな講師の方の研修を受けるよりは、どこかでお一人、ピリッと背筋の伸びる感じの講師がいても良いかもしれません。

(坂口)
来年度以降もJMAにお願いするとなると、同じ講師で継続ということができるものなのですか?

(山川)
できます。もちろん日程調整はしますが、同じ講師でも、講師を変えてほしいというご要望にも、どちらも対応できます。講師を変えるときは、研修内容に対するご意向を伺いながらプログラムの調整をさせていただいて、ご相談になるかとは思います。

(坂口)
こういうサポートを担当の山川さんからいただけることが、私は担当者としてとても心強かったです。

(山川)
ありがとうございます。評価いただいた”サポート”について、具体的にお聞かせいただけますか?

(坂口)
こちらの要望をすべて聞いていただいて、その要望を講師にきちんと伝えていただくということです。私たちが直接講師とやりとりをしなくても、山川さんはたくさん知識をお持ちなので、講師にスムーズに伝わるというか。

(山川)
事務局の方から講師の方に直接フィードバックとか注文を言うというのは、やりにくいところもあるかもしれないですよね。

(坂口)
先に笠原もお話をしていたように、やはりJMAさんは大学に関する知識がおありで、大学との関係を多く持たれているので、話が伝わりやすいです。それを講師にも噛み砕いてお伝えいただけているんだなと思うところが幾つかありました。

P1030642(山川)
ありがとうございます。 例えばテーマが”ファシリテーション”であれば、ファシリテーションのスキル自体は企業とも共通だと思うのですけど、それをどういう場面でどんな風に使うかという大学ならではの、大学の状況に合わせるというところが、ポイントになるのかなと思います。

(坂口)
一般の教育会社さんだと、もっと細かく説明をしないと伝わらないので、そこはありがたかったサポートかなと思います。

(笠原)
他の教育会社さんですと、営業の方の範疇は営業だけ、研修の内容は講師と詰めてください、というところもありますからね

(坂口)
そうです。実現に向かって、担当の方に一緒に考えていただいたという感じです。

“優秀な課長を育てる”ことがなぜ重要か

(山川)
今後の課題や、どんなテーマに取り組まれていくのかについてお伺いできればと思います。

(笠原)
まず、「上級管理職研修」について言うと、年間のテーマ設定が一番重要で、前年とあまり重複しないようにしたいのですが、何年も続けていくと年々難しくなっていくと思うんです。

なので、2~3年分ぐらいのテーマの展開を考えておいたほうが良いと思います。それはお互いの宿題ということになりますね。

他の役職別の4つの研修については、研修内で行うワークショップをどういう内容にするのかというのが、とても重要だと思います。何について考えてもらうためのものなのかがぼんやりしたワークになってしまうと、研修の成果に大きく影響が出てしまいます。

人事部のリソースで実施している手づくりの研修などは、何度もやっているうちにワークも練られてきているので、講師の話よりもワークのほうが、評価が高かったりする水準まで来ています。そういう意味で、役職別研修のワークの内容や手法を、日本能率協会さんに任せきりにするのではなく、我々でも考え、本学に実際にある課題を取り上げたりしていきたいですね。もちろん、全体の流れに水を差すような感じにはならないようにして。

(山川)
研修体系全体としての課題はいかがですか。

(笠原)
いじりすぎてもいけないので、次年度はもう一回このままやってみようと思っています。人が成長していくには時間がかかるので、もう一年、成果を見守りたいと思います。若い人はパッパと成長していきますが、年齢が上がるほど、変わるのに時間がかかるので(笑)。

(山川)
そうですね。まだ1年目ですから。

笠原)
新主任研修」があり、「新課長補佐研修」があり、「課長補佐(2年目)研修」があり、「新課長研修」があり、「課長(2年目)研修」がある。これらの研修を全部受けるには、昇格の早い人でも10年近くかかります。主任には主任の、課長には課長の役割があるということを、各種の研修を通じてきちんと認識した人が課長に昇格するまでにはもう少し時間がかかるそれでも、そういう人たちが課長職に揃ってくれば、組織としての実力は相当なものになる。課長のマネジメントがきちんと機能していれば、大学事務局という組織は回っていくと思います。いい課長が育っていくためのステップとして、それをもう少し待たないといけません。

P1030652(山川)
育成や風土づくりは、やっぱり年単位で時間がかかりますよね。

 今年、たくさんの研修を実施されていて、学内でも「こういうふうにステップアップしていくんだ」という研修体系に対する認識が皆さんに伝わってきた感じですか?

(笠原)
そう思います。そう信じています。
研修体系を整備しようと考えるようになったきっかけというのは、7、8年前ぐらいに行った職員アンケートなんです。そのアンケートの回答で、評価制度を入れて欲しいというのと、研修体制を充実して欲しいというのが大きな意見としてありました。それで評価の仕組みをつくりながら、研修の見直しもしていったのです。
そのときに思ったのは、1人の優秀な課員がいるということよりも、1人の優秀な課長がいることの影響度のほうが数倍大きいだろうということです。そういう考えが根底にあり、優秀な課長をどう育てていくかというところから、評価制度や研修制度を考えていきました。日本能率協会さんに今お願いしている役職者研修も、主任から課長までの部分と上級管理職の部分と2つに分けられ、主任から課長までのところというのは、集約すれば「優秀な課長を育てること」を目標にした教育体系なのです。

(山川)
最初から仰っていた、管理職、特に課長職のところがキーになっているということですね。

(笠原)
そうですね。部長となると一般の職員には少し遠過ぎますし、どんなに優れた部長であったとしても、メンバーからは優れた面がよく見えない。やっぱり目に見える上司としての課長が手本になるのが、一番組織への影響が大きいと思います。

(山川)
本日はありがとうございました。

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