強みを活かす新事業開発 第1章 探索ガイドラインの設定 その1 環境変化とインパクトの把握

1、探索ガイドラインの設定

新事業開発の第一歩は、「どのような新事業をやっていくか」新事業テーマを探索する活動である。しかし、新事業を闇雲に探しても非効率であるし、探したあとで経営層から「自社に合わない」と一蹴されることもある。新事業テーマを探索するに当たり、どのような分野で、何を強みにして新事業を開発するかいった探索ガイドラインをつくることは、会社にとって判断基準が明確になり、担当者にとっても後戻りの危険が回避できる。

探索ガイドラインをつくるうえでのインプット情報は外部情報と内部情報があり、それぞれ以下の内容がある。
①外部情報
環境変化とインパクトの把握、参考企業ベンチマーキング
②内部情報
事業特性・事業体質の検討、経営資源の確認、新事業成功・失敗要因の抽出

本稿では、環境変化とインパクトの把握について解説する。

2、環境変化の把握

自社を取り巻く事業環境は図表Ⅱ-1に示すようにマクロ環境とミクロ環境がある。

図表Ⅱ-1 環境変化の把握

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通常は、ミクロ環境の中で事業運営を行っていることが多い。つまり、既存業界・既存市場の中で決まった顧客に対して、競合と競争しながら収益を上げていく活動である。

一方、新事業はミクロ環境の把握だけでは不十分である。新事業は3年先から10年先ぐらいの将来事業を構築するため、マクロの視点で将来どのような変化が予測できるか、その変化によって自社を取り巻く業界や市場がどのような影響を受けるかを見ていかないといけない。場合によって10年先には、自社の業界が様変わりしてしまうこともあり得る。たとえばコンビニのドリップコーヒーは今や日本最大のコーヒーチェーンといえるが、10年前は存在していなかったし、既存のコーヒーショップ業界内ではなく異業界からの参入である。新事業を考えるときは、自社の業界そのものに影響を与えるような社会の変化や産業の変化を捉えることが必要なのである。

3、マクロ環境変化の把握

マクロな視点での事業環境分析は、マーケティングのフレームワークであるPEST分析を活用する。PESTとは、P:Politics(政治面)、E:Economy(経済面)、S:Society(社会面)、T:Technology(技術面)の頭文字をとったもので、マクロ環境を捉える典型的なフレームである。

政治面で注目するのは、国や自治体の政策である。たとえば、アベノミクス第三の矢として「日本再興戦略」が内閣府で策定されており、国として今後強化すべき分野が掲げられている。ここで示されている分野には健康関連、エネルギー関連、スポーツ関連などがあるが、これら分野では今後さまざまな施策が打ち出される。自治体においても産業振興や観光振興などの動向を把握していく。

経済面では、GDP成長率などの経済指標だけでなく、顧客や技術で関わりが出てきそうな産業を幅広くウォッチすることを心掛ける。たとえば自社が自動車関連業界であれば運転者である生活者関連として、住宅業界や電機業界の動向を把握する。住宅業界では住生活での居住空間の研究のみならず、移動時における居住空間の研究をしているかもしれない。

社会面では、高齢化の進行はすべての産業で不可欠な視点である。顧客の高齢化はもちろんであるが、就業者の高齢化も見逃さない。最近、海外のBtoC企業の日本市場参入が増えているが、狙いの1つは高齢化先進国の日本でテストマーケティングをしてノウハウを掴み、新興国の高齢化でビジネス展開することにある。

技術面では、すべての産業に影響を与えるのがICTの技術革新である。目的としてのICTもあれば手段としてのICTもある。また、異分野技術の融合は今後の技術革新の視点の1つである。

これらの環境変化によって、10年後、20年後に世界がどうなるか、どのような世の中になるのかを想定するのである。

4、マクロ環境からのインパクト分析

インパクトは直訳すると衝撃、影響である。政治・経済・社会・技術のマクロ環境変化が、自社の業界にどのような影響を与えるか?言い換えれば自社の業界に多大な影響を与えるマクロ環境変化は何かを見出す。たとえば新興国の経済水準の上昇は、食品業界や日用雑貨業界にとって新たな需要の拡大というプラスの影響を与える。少子化は玩具業界にとっては需要量の減少というマイナスの影響を与える。変化は機会でもあり、脅威でもある。プラスの影響を与える変化は自社にとって事業機会の認識になるし、脅威は新事業の必要性を再認識させる働きを持つ。

変化の幅が大きければ大きいほど新規参入余地も多いが、変化が既存業界で対応できる範囲であれば参入余地は少ない。

図表Ⅱ-2 マクロ環境からのインパクト分析

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マクロ環境からのインパクト分析は図表Ⅱ-2のようにまとめる。
キーワードには「高齢化」「少子化」など環境変化のキーワードとなる言葉を入れる。変化の方向とは、そのキーワードが具体的にどのような変化を起こすかである。「高齢化」キーワードを例にとると、高齢化によってたとえば「アクティブシニアの増大」といった変化が起こる。それらマクロ環境変化がどのようなインパクトを与えるかを影響の欄に入れる。BtoB企業の場合は、社会面の変化が自社に直結するというより、顧客にまず影響があり、それが自社に影響を与える。たとえば自動車部品会社にとって高齢化はまず、自社の顧客である自動車メーカーに影響を与える。「高齢者ドライバーの増加」や「交通事故の危険性増大」という影響である。それら影響が自動車部品業界に影響を与える。「ドライバー支援機器の需要増」などである。こうした背景から参入機会を導き出すのである。

5、探索分野の想定

マクロ環境からのインパクト分析により、市場分野や産業分野として今後、どの分野を狙うかを抽出する。検討する分野は1つに絞らず、可能性の観点から複数の分野を候補にあげる。マクロ環境変化によって今後、新たに生まれそうな分野、急成長しそうな分野、既存の業界に取って代わる分野も検討の対象とする。マクロ環境分析のポイントは幅広く分野を捉えて情報収集を徹底することである。

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