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「コーポレートドラムサークル」の活用場面は?|言葉を超えて「関係の質」を高める組織開発 vol.5

研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
組織開発・組織変革と“楽器”―。一見、遠いところにあるように思えますが、言葉の限界を超えて組織の「関係の質」を高めることに、「リズム」は大きな作用をもたらします。組織メンバーの参加意識・協働意識や、創造性につながるアクティビティ「ドラムサークル」を切り口に、人間の本能への理解を踏まえた組織開発の取り組みについて、深代達也講師にお話を伺っていきます。

「コーポレートドラムサークル」の活用場面は?

-「コーポレートドラムサークル」のアクティビティは、初めて会う人同士でもかなり効果を発揮すると思うのですが、上司・部下関係などで日頃わだかまりや、言いづらいことがある人同士でも、うまく取り組めるものでしょうか?実際、何かが変わっていく場面というのはあるのですか?

(深代)
安全でオープンな場を継続することで、ドラムの叩き方が変わったり、反応が変わったりしたりするのですよ。
関係性も表れてきます。対話型アプローチの組織開発の限界のような話をしましたが、このドラムというのが、言葉にはできない“もやもや感”などを表現できます

「ちょっと、今の気持ちを叩き方で表現してみましょう。」
「どんな感じに聞えましたか。」
そして、「いろいろな意見を聞きながら、それで一緒に少し叩いてみましょうか。」こんな感じで進めます。

その“もやもや感”みたいなものが、皆で一緒に叩くことによって、ふっと軽くなっていくような感じがしたり、理解をしてもらいたくなったり、共感できたりします。

まさに、真似をすることによるミラーニューロンの発動みたいなところです。ミラーニューロンは、他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っていると考えられています。
だから、言葉で何か重ねなくても、共通の体験をすることで関係が変容する

-「ドラムサークル」は治療にも活用されているのですよね。

(深代)
そうです。「ドラムサークル」は、基本的に治療のモデルです。僕も、もともとそれを勉強してきたのです。例えば、心の痛手を負った暴力をふるう少年への治療として、エネルギーを違う形で持つことによって、「自分も人と関われるのだ」、と自信を持たせるような例があります。このアクティビティを継続してやった集団はやらなかった集団と比較すると、良い回復成果が出た、という実証研究の結果もあります。

-企業研修での活用場面でいうと、数日や数週間にわたる、長いコースを一緒に過ごすメンバーのチーム・ビルディングとして使われることが想像できるのですけれど、それ以外の方向性はどのようなものがあるのですか?

(深代)
人材開発では、新入社員のチーム・ビルディングとして、あるいは労働組合の主催するメンタルヘルス対策といった場面で使われていたりします。
アメリカでは企業内の人種間の緊張感を和らげるために導入した例もあったようです。

組織開発に「コーポレートドラムサークル」を!

-より多様な価値観があればあるほど、属性も違う人がいればいるほど、有効かもしれないということですね。

(深代)
先日実施した企業研修では、メキシコと中国と韓国と日本の人が参加していましたね。初めて一緒に集まった人たちのチームづくりとして実施しました。メンバー一人一人の人となりが伝わってくるような、まさに言葉を越えるコミュニケーションの場でした。

他には、最初に話したような組織開発的な取り組みとしても導入されています。
ある職場の関係性をよりいい方向に向かわせるために対話のアプローチをするとして、その前段として、スタートの抵抗感を解消するために「コーポレートドラムサークル」をおこなう。

あるいは、定期的な振り返りをする際に、言葉で振り返るだけだと何か業務のようになってしまうところを、「コーポレートドラムサークル」で五感を使いながら、よりコミットしてもらうような仕掛けにすることもあります。

たとえば、振返りの場面では、3カ月間の自分なりの取組みを称えてもらいながら、リズムを叩き、応じる形でメンバーにもリズムで返してもらう。

言葉を乗せながら叩く場合もありますし、あるいは、「どういう気持ちで叩きましたか」と、あとから説明をしてもらうこともあります。

-「コーポレートドラムサークル」の場が活気づいたり、意味ある場になるために深代さんが心がけていることを教えてください。勇気がない人の背中を押すことも大事ですよね。

(深代)
そうですね。基本は参加者一人一人が主役。私は「伴走者」に努めています。このアクティビティの場においても、「自分はそれをできる」という自己効力感を持つことができると参加者の表情にも出てくるし、身振りも変わってくる。それを見逃さないようにしています

-挑戦やそれに対する周囲の受容を、参加メンバーにフィードバックしたり、共有するための観察者の役割もあるのですね。

(深代)
また、恥ずかしがって叩いているような場合には、「その恥ずかしがり方がチャーミングでいいね!みんなでチャーミングにやってみよう」と、ハプニングを材料に展開して活かすような工夫もします。

-心理学、人類学的な解説も加えるのでしょうか。

(深代)
講義は必要に応じてですね。「コーポレートドラムサークル」が終わった時に「楽しかったな」とか「できそうだな」と思えていることが重要なので、解説情報はなくてもいい。

リーダーが対象で、このアクティビティ体験を活かして”自分の組織のなかでどんな取組みをする?”と考える目的の場であれば、理論的な話もします。私ではなく参加者に、「コーポレートドラムサークル」のリーダー役・ファシリテーター役を体験してもらうこともあります。

自分の声のかけ方や、動きの見え方によってメンバーのやりやすさが変わったり、硬い表情だとメンバーも硬くなる、といったことを体感してもらいます。

-心や体も動かしながらアクティビティで体験したことは記憶に残りやすく、職場やチームでの試行錯誤につなげる効果が期待できますね。
最後に、人材開発・組織開発、組織づくりに携わる方へメッセージをお願いします。

(深代)
組織を脅かす要素や、組織の多様性が高まっている一方で、競争に勝つことが求められる今、人や組織をより科学的にマネージするスキルの必要性が高まっています。

言い換えると、これまでの“モノを効率的に扱う科学”だけではなく、人や組織の力を引き出す科学が求められる時代です。その意味では、組織開発はより一層重視される状況になっていると思います

お話してきたように、動物的な側面での安心や一体感を高める“非言語的な組織開発”と、ビジョンや目的を分かち合う“言語的な組織開発”の両方が大事ですが、前者はより前提となるものです。

そんな目で、皆さんもご自身の職場を見つめ直してみていただきたいと思います。

-どうもありがとうございました。

~おわり(5/5)~

◆深代 達也(ふかしろたつや)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 KAIKAプロジェクト室 主管研究員
組織開発分野セミナー講師:チームビルディング、組織力向上、モティベーションマネジメント、エンゲージメント向上
米国NLP協会認定トレーナー、DiSC公認インストラクター、Ocapiプラクティショナー
米国REMO社HealthRhythms&HealthRhythms Adolescent Protocolファシリテーター
“トレーニング・ビート”認定トレーナー、ドラムサークルファシリテーター協会会員
日本能率協会総合研究所にて、バランスト・スコアカードや人事革新・組織活性を中心としたコンサルティング&人材育成に従事。同研究所経営コンサルティング部長を経て「人と組織の可能性の最大化」を使命とする株式会社可能性コンサルタンツを設立。その後現職。
現在は、音楽なども活用した組織開発の推進支援、企業理念共有支援、エンゲージメント向上支援、インフルエンサーに向けたチームをエンパワーする力向上などの現場指導・人材育成等を推進している。