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好循環企業の特長|メンタルヘルスで組織を強くする vol.3

公開日:2015/08/17 更新日:2020/05/06
研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
過労や職場環境が原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、2014年度に労災認定された人は497人(前年同比61人増)に上り、過去最多を更新したことが、6月25日厚生労働省の集計で分かりました。また、2015年12月から、改正労働安全衛生法に基づき、従業員数50人以上の企業には「ストレスチェック」が義務づけられるなど、企業側は従来以上に、従業員の職場環境の改善をすることが求められてきます。
「組織と人の活性化」を専門の一つとする羽地朝和氏(日本能率協会専任講師)に、「メンタルヘルス」という切り口から健全な職場づくりについてお話を伺っていきます。

Vol.3 好循環企業の特長

-羽地さんが支援している企業で、メンタルヘルスの施策が上手くいっている企業の教育体系や育成の取り組み方にについて教えて下さい。

(羽地)
一つの階層だけの教育では上手くいきません。メンタル面でタフな新入社員を育てるためには、その上のOJTトレーナーをしっかり育てる。そして、そのOJTトレーナーのサポートを管理職がきちんとできるように育成するというように、それぞれの連携が取れている事だと思います

-管理職やマネジメントの一部の人だけではなく、様々な階層でメンタルヘルス教育を行い、それが循環するということが、良い事例だという事ですね。

 また、様々な階層で研修をされてきたと思いますが、羽地さんが大切にされているポイントはありますか。例えば、メンタルヘルスという言葉に対して、受講者からもアレルギー反応のようなものがあったりするかと思われるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

(羽地)
確かに、メンタルヘルスという言葉に対して、偏ったイメージがあるように感じます。そういう場合は、例えば、「メンタルウェルネス」という言葉を使うことで対応したりしています。
新しい言葉で伝えるという方法は、有効かもしれません。例えば、「メンタルウェルネス」という言葉を使う事により、病気の人への対応ではなく、職場が活性化する、人が育つための施策だと感じられるようになるかもしれません
その他には、「セルフマネジメント」という言葉を使ったりしています。言葉を変えることにより、抵抗感なくプログラムに参加できるというのはあると思います。

また「組織の活性化」「人材育成」「メンタルヘルス」のヒューマンマネジメントの研修として行うことも多いです。

-研修を受ける前段階の、言葉の見せ方も大切という事ですが、研修プログラムの内容やその他の取り組みについては、どのようなものが効果的なのでしょうか。

(羽地)
3つあります。
1つ目は、スキルを身に付ける事だと思います。マネジメント層については、まずは予防。不調者のでない職場づくりを学んでもらいます。次に早期発見。不調のサインを見つけ、声をかけてその人の話を聴くスキルが必要です。ケーススタディーやロールプレイングで実践的なスキルを身につけてもらいます。そして休職者が職場復帰できる環境づくりです。中堅若手については、セルフマネジメントという自分自身を良い状態にするスキルが大切です。これらのスキルは研修で身につけることが可能です。

2つ目は、システムや制度といった仕組みを整える事です。メンタル不調者もしくはその予兆がでている人が出た時に、相談できる場や、場合によっては外部の専門機関につなげるという仕組みをきちんと作る事が必要です。

3つ目は、風土、雰囲気です。スキルや制度とは違い、雰囲気です。例えば、メンタル不調者に対して、オープンに話せる雰囲気、風土を作る事です。

教育は、スキルだけではないと思っています。自社のメンタルケアの制度について正しく理解してもらい誰もが活用できるような知識教育も大切です。

またメンタル不調の対応の成功事例や、回復した事例を企業側から社員に積極的に伝えることで、「メンタルのテーマはタブーではない」「もっとオープンに言ってもいいのだ」という風に捉えることができます。

オープンに言えば言うほど、実は問題は未然に防げるものなのです。隠すことによって、事態が根深くなり、突然休み明けに出社しなくなった時にはもう慢性化してしまっています。

オープンにすることで、皆が安心して、悩みや不安を職場でも話せるようになります。
このように、スキル、制度、雰囲気の三つが整っている企業は、上手くいっています。私もこれを企業に是非提供したいと思って、日々支援しています。

-好循環している企業は、スキルだけではなく、制度や雰囲気など、そういった教育や環境整備もしっかりと行われているということですね。

~つづく(3/5)~

◆羽地 朝和(はねじ ともかず)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 専任講師
株式会社プレイバック・シアター研究所 所長
大手企業から中堅企業を対象に、人材育成コンサルティング業務に従事。その他、精神科クリニック・精神病院でのグループセラピー、大学・専門学校等で人間関係論などの教鞭も取っている。