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リーダーシップとは、楽しい旅にメンバーを誘うこと|講師インタビュー「リーダーシップの学びに『感動』を」 vol.5

公開日:2015/07/17 更新日:2020/05/06

研修の最前線で活躍する講師のインタビューを交えながら、様々な人材育成テーマについて考えるシリーズ。「リーダーシップ」をテーマに中島克紀氏にお話を聞きます。

vol.5  リーダーシップとは、楽しい旅にメンバーを誘うこと

講師がファシリテーターとして心がけていることとは

―プログラムでは、参加される方へどんな働きかけを心がけていますか?

(中島)
働きかけのポイントとしては、皆さんが初めての場所で、新しいことを学ぶと、不安な状態・緊張した状態になってしまう、その緊張を解くのがまず重要です。
人間は必ず、新しいものから自分を守るためにバリアを張るのです。表面に出る行動でいうと、たとえば『腕組み』をしたりしますね。
このバリアがある以上、リーダーシップを発揮しようとしても、ミスコミュニケーションが起こってしまうのです。そうするとお互いに相手に信頼されていないような感覚になる、と言われていますね。リーダーが心を開き、自身の良い状態を意識的につくって保つことはとても重要です。

研修の場で私が心がけているのが、まずバリアを外すために「笑顔になりましょう」、それから「心を開きましょう」、それから「真っ直ぐに立ち軸をつくりましょう」ということ。バリアはここにいる参加者皆さんを包含して外側に張りましょう。それによって外部から刺激を遮断し、集中して、安心できる場をつくります。

皆さん同士に、互いのバリアを外してもらって何でも対話できるようにすることを心がけていますね。そうすると集まった方たちの異文化・異質の体験が、相互に交流されるので、短時間で信頼関係が積み重なってくるのです。
内面的なものを共有するので、このプログラムで本当に感動したという人が多いです。
私自身はファシリテーターとして環境を整えて、「さあこっちへ行ってみませんか」と皆さんを盛り上げていくことにとても気を配っています。

それから、脳機能は実際の数パーセントしか使っていなくて70%は眠っているといわれています。私の信条は、皆さんの眠っている潜在能力を最大化させること。
セミナーでやっていることの一例を挙げると、「フロー理論」というものがあります。プロアスリートや芸術家が没頭して通常では考えられない力を発揮する状態が「フロー状態」と言われているのですが、同じような状態を職場で作ることを目指すのですね。
実現できないように思える困難なことにチャレンジして、チームワークで夢中になって取り組んだら課題解決できた、という「フロー状態」の体験をしてもらう演習などを設けています。

リーダーシップとは、楽しい旅にメンバーを誘うこと

―リーダーシップは階層・年齢を問わない、という話ですが、若い人でも発揮できるものなのでしょうか?

(中島)
0歳から我々は常にリーダーシップとマネジメントをなんらかの形で使ってきたわけですね。例えば、2014年にノーベル平和賞をとったパキスタンのマララ・ユスフザイさん、彼女は17歳でした。
でもすごく過酷な人生だった。その体験を通じて語ったメッセージは世界中に感動を起こした。
リーダーシップを発揮するということは、自分の『生き様』みたいなものを体験として語り、それが良きビジョン(ありたい姿)と繋がっているものなのです。メンバーのために、会社のために、社会のために、ということを我々は年齢など関係なく意識しビジョンを描ける。

ただし、共通の価値やミッション(使命)を深く議論し落とし込まないと、組織には間違ったビジョンが生まれてくる。たとえば、「利益だけだせばいいのか」と手段を選ばずに利益を得るのは、我々の目指すところとは違う、と真剣に言うリーダーがいなければ、変な方向に行ってしまう。創業の精神や行動基準に立ち返る必要がある。
だからGE社のジャック・ウェルチは、現在のパフォーマンスが低くても、GE社のバリューを深く理解した人を評価した、と言われています。

リーダーは、メンバーに組織のビジョンを語り、連れていくのです、「一緒に行こう」って。だからリーダーシップとは、楽しい旅にメンバーを誘い日々の仕事をエンジョイすること。楽しいから、みんなも参加してくる。
数字だけで、人はついてくるでしょうか?ついてこないですね。例えば「パリに行ってこんな体験をしようよ」って言われたらワクワクしませんか?そんな感じでビジョンを語りませんか、ということです。

ビジョンを描き語るリーダーシップは、表現、アートであるとも言えます。

セミナーでは、ビジョンを熱く表現するトレーニングとして、演劇メソッドを活用することもあります。
(企業内研修プログラム事例:右図)

最高の未来を描いて、皆さんがワクワクしながら新しい挑戦をするということを、もっともっと支援していきたいですね。


~おわり~

 

◆中島 克紀(なかじま かつのり)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 エキスパート
「TheLeadershipChallenge」認定マスター
社団法人日本能率協会に入職後、マネジメントとリーダーシップの機能、チーム変革の研究と理論・実践のバランスを追及するセミナー開発に従事。アメリカの財団法人との次世代リーダープログラム共同開発後、企業・自治体での管理者教育に従事。