目標管理制度|当面する企業経営課題に関する調査:日本企業の経営課題2016

公開日:2016/12/26 更新日:2023/09/13

目標管理制度の成果について

一般社団法人日本能率協会が2016年12月にまとめた「第37回 当面する企業経営課題に関する調査 日本企業の経営課題2016」(以下、経営課題実態調査2016と呼ぶ)からの抜粋を記載する。

目標管理制度や、それにもとづく上司と部下による面談が、社員のパフォーマンスやモチベーションを高めることに結びついていると思うかを尋ねたところ、大手企業では「そう思う」と回答した比率が50.7%となったものの、中堅企業・中小企業では2割前後に留まり、「そう思わない」(「そう思わない」「あまりそう思わない」の合計)との回答が中堅企業では27.5%、中小企業では31.2%あった。中小企業では「目標管理制度は実施していない」が7.8%あった。

経営環境の変化が激しい中においては、年に1~2回の目標面談よりも、日常的な上司と部下のコミュニケーションによるパフォーマンス管理、キャリア支援を行う必要があるという議論が世界的にもされつつあるが、効果的な目標管理制度の在り方については再考の余地があると言えそうだ。

【図表】 目標管理制度が社員のパフォーマンスやモチベーション向上の関係 (従業員規模別の比較)

「目標管理制度や、それに基づく上司と部下による面談が、
社員のパフォーマンスやモチベーションを高める」ことに関する考え

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大手企業:従業員数3000人以上
中堅企業:従業員数300~3000人未満
中小企業:従業員数300人未満

先の日本能率協会が実施した「経営課題実態調査2016」でも触れさせていただいたが、レーティングの廃止という話題が日本企業の人事部で関心を呼んでいる。GE、マイクロソフト、ギャップなどの企業がレーティングレスの選択に踏み切ったからである。関心の多くは年次評価がなくてどうやって昇給や昇進を決めるのかということにあったようである。環境変化の激しい業界では、俊敏に目標を変えていかないと環境変化に追い付かないということがそもそもの認識にあったといえる。また、オープンイノベーションに見られるようなコラボレーションの進展とともに、社内でも部門を超えたコラボレーションが進むと、柔軟な仕事の仕方が必要になってくる。さて、レーティングレスを選んだ企業が新たに取り入れた目標設定やフィードバックの一部について見ていこう。

①目標設定と1対1のフィードバックの都度実施

  • 年間という時間軸で設定されていた目標設定とフィードバック(目標管理制度上では中間面談とか期末面談とかで実施)が、必要に応じて行われ、そこには年間という時間軸がなくなる。

②メンバー相互のフィードバックの都度実施

  • メンバー相互のフィードバックが奨励され、360度診断(多面診断)を年に1回実施するのではなくSNSなどの社内ツールでリアルタイムに実施される。

③ミレニアル世代の台頭に呼応した「個のマネジメント」

  • 多様な価値観を有し、迅速なフィードバックを求めるミレニアル世代は、画一的な人事制度における横並びの中での比較ということを受け入れない。上司との対話の中で個人の強みや価値観に応じて個別に目標設定がされていくことが必要となる。

日本企業の多くは目標管理制度を導入している。目標管理制度は、評価制度であるとともに目標を中心において業績を向上させる仕組みである。目標達成の方法論であり、評価の仕組みである。

目標管理制度については以前から多くの議論がされてきた。研究開発職のように1年間を超えた長期の時点で成果が出るような職種の目標設定をどう考えるかという問題がある。新規事業開発のようにスピードとフレキシブルが求められる業務では、何を成果とするかについて「失敗の許容」という風土がないと減点主義ではうまくいかない。管理部門の目標は維持改善目標で本当にいいのかという問題もある。

制度を中心にして発想すると、いろいろと実態に合わないことが出てくる。この不具合を「運用」ということで各社は対応してきた。
 
先ほどのレーティングレスの話題に戻るが、人事制度についての考え方が米国と日本では違うということもあるが、各自の職務が明確に定義されていれば、それを超えることがマイナスに働くこともあろう。チームやプロジェクトで動く上で、目標設定とフィードバックのフレキシブルさを求めるという理由はよくわかる。

日本企業は今後レーティングレスを目指していくのだろうか。その結論はここでは出さないが、レーティングレスを選択した企業が取り入れた理由は日本企業の参考になるだろう。

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