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組織を活性化し、若手を育てる【シェアード・リーダーシップ】の導入メリット

公開日:2023/01/12 更新日:2023/09/14

人事関連の話題でも耳にする機会が多くなった「シェアード・リーダーシップ」。組織が活性化するとも言われるこのリーダーシップの考え方と、社内に浸透させるために必要なことを解説します。

シェアード・リーダーシップとは何か

シェアード・リーダーシップは「メンバー全員が主体性を持ち、リーダーシップを発揮する」という考え方です。従来のリーダーシップは特定の一人がリーダーになりメンバーを率いて目標を達成していくものですが、シェアード・リーダーシップは「複数の人間、時には全員がリーダーシップ」を発揮して目標を達成する考え方です。あるプロジェクトに最適と思われる複数のメンバーがリーダーシップを発揮し、それ以外のメンバーはリーダーを補佐する(フォロワーになる)というイメージです。とはいえ、フォロワー側のメンバーもリーダーの役割を共有するのが基本なので、「シェアード(共有型)」リーダーシップと呼ばれるわけです。

 この考え方を具現化している組織としてよく知られるのが「オルフェウス室内管弦楽団」です。ニューヨークを拠点に活動するこの楽団には指揮者はおらず、楽曲ごとにリーダーを選びます。リーダーの解釈した楽曲に対して、メンバーは主体的になって意見を言い、全員で演奏を作り上げていきます。

「オーセンティック・リーダーシップ」、「サーヴァント・リーダーシップ」など、近年注目されている新しいリーダーシップの概念はいくつかありますが、これらはいずれも特定の一人がリーダーになりメンバーを率いるという意味で「垂直型」のリーダーシップです。一方、シェアード・リーダーシップは「水平型」の関係といえます。ある研究によると、水平型のリーダーシップを社内で浸透させるほうが、垂直型のリーダーを置くより組織が活性化したり、若い人材を育てるのに有効だという報告があります。シェアード・リーダーシップは若い社員でもリーダーシップを発揮する機会があるので、若手の主体性を養うのにも良いかもしれません。

なぜ今シェアード・リーダーシップが必要か

シェアード・リーダーシップが必要とされる背景には、変化の激しいビジネス環境があります。言い換えれば一人のリーダーの意思決定だけで対処しきれない状況がたくさん発生しているともいえるでしょう。そこで、一人のリーダーの能力に頼るのではなく、メンバー全員の強みを最大限に発揮することで変化に対応できるのではないかと、シェアード・リーダーシップが期待されているのです。

シェアード・リーダーシップが発揮されるために必要なこと

シェアード・リーダーシップが発揮されるために必要なことを、「環境」と「個人」の視点からご紹介します。

環境

チーム内で活発なコミュニケーションがある

チーム内のメンバーが信頼関係で結ばれていれば、一人ひとりが発言しやすく、意見も交わしやすくなります。そういう環境にいるメンバーは、自然と主体的になり、リーダーシップが発揮しやすいと言えます。普段からメンバー同士でのコミュニケーションを活発にしておきましょう。

メンバー全員が、互いの強み・弱みを把握している

シェアード・リーダーシップではメンバーの強みを生かすリーダーシップが求められます。そのためには、まず自分の強みと弱みを把握していること、そして他のメンバーの強みと弱みも把握し、お互いがどのような人間なのかを理解し合っておくとよいでしょう。

情報と目標が共有されている

シェアード・リーダーシップを発揮するためには、自分の業務だけを見ていては発揮できません。他のメンバーの業務情報や、チームで達成するべき最終目標を全員が共有することが必要です。

個人

主体性がある

シェアード・リーダーシップはメンバー全員がリーダーシップを発揮することが前提になるので、当然一人ひとりに主体性が求められます。日頃の業務を通じて、「状況に応じてやるべきことを自分で判断できる」「自分のことだけでなく、他者のことも考えられる」「自分の行動に責任を持てる」「失敗しても改善策を考えられる」などの主体性を養う必要があるでしょう。

影響を与え合うスキルがある

シェアード・リーダーシップが発揮されると、従業員同士がよい影響を与えながら最終目標に向かって行動します。この時、特定のメンバーにだけ影響を与えているわけではなく、メンバーが互いに影響し合っている状態です。そういう状態になるためには、メンバー全員がコミュニケーションやコーチングなどのスキルを高めて、お互いが尊重し合えることが望ましいでしょう。

シェアード・リーダーシップを浸透させるために必要なこと

シェアード・リーダーシップを導入して浸透させるためには、まずメンバーに自社の目標や目的といったビジョンをしっかりと把握してもらう必要があります。ここをしっかり行わないと主体的で責任をある行動にはつながりにくく、シェアード・リーダーシップを導入しても浸透が難しいでしょう。

また、メンバー全員がリーダーシップの経験が一度もないと、導入してもうまくいきません。個人のスキルに応じで、リーダーとしての役割や業務を経験させておきましょう。この時、リーダーシップの経験と合わせて、エンパワメントも実施するとよいでしょう。エンパワメントとは「能力の開花や権限を譲る事」を意味し、メンバーに業務の遂行や意思決定の権限を経験させることです。

まとめ

シェアード・リーダーシップは変化の激しい時代に合ったリーダーシップの考え方とも言えます。自社で導入する際は、まず従来のリーダーシップの固定概念を捨てることから始めてみてください。そしてこの機会に研修やワークショップで学んでみてはいかがでしょうか。

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