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【2022年版】ダイバーシティ&インクルージョン研修とは?

労働人口の減少やグローバル化、多様化するニーズへの対応に向けて、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業が増えています。そもそもダイバーシティ&インクルージョンは何のために必要で、どんな人が学んでおくべきなのでしょうか。研修を行う際の注意点とともに紹介します。

ダイバーシティ&インクルージョン

「ダイバーシティ」はなぜ必要なのか?

ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味です。近年では、「ダイバーシティ&インクルージョン」と2つの概念がセットで扱われることが多く、頭文字を取って「D&I」とも呼ばれています。インクルージョンとは「受容」という意味で、社員がお互いを認め合いながら違いを活かしている状態を表します。

企業でのダイバーシティは、性別や年齢、国籍、経歴や働き方など多様な人材を、単に受け入れるというだけではなく、積極的に採用し、その多様性の中から新たな価値を創造して企業の競争力に繋げるための成長戦略の一つとされています。 

ダイバーシティに関する取り組みが始まったのは1960年代のアメリカと言われ、それ以来、経営戦略の中でも重要なものとして認識されてきました。一方、日本でダイバーシティが注目されるようになったのは、2000年に入ってからのことです。働く個人の人権を尊重する動きとして、また少子高齢化に伴う労働力確保に向けた解決案として、それまでマイノリティとして主たる労働力とはみなされてこなかった、女性や障がい者、外国人の雇用を重要視する企業が増加したことがきっかけでした。

日本企業にとってダイバーシティが必要な理由

日本企業にとってダイバーシティが必要な理由としては、次のような点が考えられています。

グローバル化に対応するため

人口減少により国内のマーケットが縮小する中で、マーケット拡大のためにはグローバル化が不可欠です。グローバル化を目指すには、多様な年齢、性別、人種、働き方に加え、さまざまなパーソナリティ・価値観・信条・経歴を持った社員が一緒に働くほうが有利であり、そのための対応が求められます。

イノベーション創出のため

顧客に新しい価値提供するためは、これまで社内になかったさまざまな視点が必要です。多様性のある環境でそれぞれの強みが発揮されることでイノベーションが起き、経営成果につながるとされています。ダイバーシティは問題を解決するためではなく、個々の「強み」を活かすために必要だというわけです。

③グループシンキング回避のため

グループシンキングは「集団浅慮」とも呼ばれます。経済産業省によると、集団浅慮とは「構成員に対する無言の圧力から、集団にとって不合理な意思決定が容認され得ること」であり、同質性の高い集団で起こりやすいとされています。集団の中に多様性を確保することで、同調圧力を避け、より合理的な意思決定を行うことができます。

④投資家に評価されるため

③からも言えることですが、集団内にダイバーシティがある=意思決定に関するリスクが低いとみなされ、投資家からの評価も高まります。さらにダイバーシティ&インクルージョンの概念はSDGsの項目にも入っていて、これに取り組んでいること自体も評価の対象となります。ダイバーシティ&インクルージョンは今や、資金調達のためにも欠かせない取り組みと言えるでしょう。

⑤採用競争力をつけるため

今や働き手も、「多様な人材が活躍できる制度・組織風土があるか否か」という視点で企業を選んでいるため、こうした環境が整っていることは採用力の向上にもつながります。また、入社後の社員のエンゲージメントを得るためにも重要です。

研修を企画する際の注意点

ここまで見てきたように、ダイバーシティ&インクルージョンは組織にとってメリットの大きい取り組みではあるのですが、研修として取り入れる際には注意すべき点もあります。「なんとなく」「とりあえず」の研修では、形式的なものとして受け止められたり、かえってマイノリティ差別につながってしまう恐れすらあります。

研修を企画する際には、そうした結果にならないよう、下記のような点に留意するとよいでしょう。

全社員を対象に行う

「ダイバーシティ」をテーマにした研修では、いわゆるマイノリティとされてきた側を変革する研修(「女性活躍研修」「シニア活躍研修」など)が行われることがよくありましたが、この場合、マイノリティの側が心理的、時間的負担を強いられ、周囲の意識は変わらないままということにもなりかねません。そうならないためには、全社員が意識改革を図れるような研修を実施し、さらに心理的負担、時間的負担についても公平に行うのがよいでしょう。

とはいえこの場合、いわゆるマジョリティ側の社員が「不要な研修を受けさせられた」と反感を抱く可能性も考えられます。そうならないためにも、次の点を意識するのが効果的です。

さまざまな「多様性」に焦点を当てる

参加者に「自分が働きやすくなるための研修だ」という意識を持ってもらうためには、年齢、性別、障がいの有無といったことだけでなく、さまざまな多様性(価値観、宗教、性的志向など)に焦点を当てるのが理想です。そうすることで、「自分はマジョリティだ」と思っていた人の中にも人とは違う「働きづらさ」があり、ダイバーシティへの取り組みがその解消につながるという認識を持ってもらいやすくなります。ただし、デリケートな問題でもあるため、研修の設計は慎重に行う必要があります。

どんな立場の人がどのようなことを学ぶと効果的なのか?

ここまで見てきたように、ダイバーシティは企業全体として取り組むべきテーマです。さまざまな人にとって学ぶメリットがありますが、ここでは4つの立場に分けて見てみましょう。

・マネジメント層

ダイバーシティの浸透には、マネジメント層の積極的な関与が不可欠です。多様性を活かす組織を機能させるため、時代背景や、ダイバーシティ&インクルージョン推進のメリットとそれへ向けての管理職の役割、個々のメンバーの特性理解、組織内での信頼関係構築・育成・業務配分の進め方などを学ぶ必要があります。 

・人事部門

社内のダイバーシティ推進を実現し、組織風土づくりを牽引する立場として、さまざまな多様性についてはもちろん、働き方の多様化への対応について学ぶ必要があります。企業に求められる取り組みを理解しながら、労働環境・制度を充実させ、従業員からの相談に対処できる状態を目指します。

 ・ロールモデルの少ない立場の人

たとえば女性の少ない組織における女性管理職候補にあたる人など、これまで以上の活躍が期待される人も、個性や属性をふまえた自身を活かすため、キャリアの方向性を考え、自らステップアップする方法を学んでおくほうがよいでしょう。社内にロールモデルが少なく、また社内上司に育成の経験値が少ない場合は、キャリア開発への動機づけのために外部講師が研修に関与したほうがよい場合もあります。研修を通じて、組織を超えた横のつながりが生まれるという効果もあります。

・一般社員

どんな社員であっても、広い意味では異なる価値観・個性を持ったダイバーシティ&インクルージョンの当事者です。「働き方や考え方の違いを越えて互いを認め尊重する」という組織風土づくりの観点から、ダイバーシティ&インクルージョンを会社全体に浸透させるためにも学ぶ意義があるでしょう。具体的な学習内容としては、ダイバーシティ&インクルージョンの組織へのメリット、当事者意識をもつこと、信頼関係・生産性のある職場づくりのためにできることなどが考えられます。

どの層にとっても共通して重要なのは、失敗や対立を恐れることなく多様な意見・あり方が尊重される状態、つまり「心理的安全性」という考え方を理解することです。

ダイバーシティ&インクルージョンを学ぶことは企業にどのような影響をもたらすのか?

人材の流動化が加速する中で、優秀人材の維持・獲得のための魅力的な職場整備は、多くの企業が直面している課題でもあります。

さらに新型コロナウイルス感染症の拡大以降、ダイバーシティ&インクルージョンに向けての動きが加速していると言われています。事業環境の大きな変化に対し、製品・サービスやそのプロセスのイノベーションが求められているからです。

従来日本で考えられてきた「労働力確保」という目的のためだけでなく、企業の競争力を高めるためにも、個々の「強み」を活かすダイバーシティについて学ぶ意義があると言えるでしょう。

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