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今「オーセンティック・リーダーシップ」が注目される理由

近年、「オーセンティック・リーダーシップ」というリーダーシップが新しいリーダー像として注目されています。時代やビジネス環境の変化に合わせて、リーダーシップも変化している中で、従来のリーダーシップとは特性が大きく異なるのが特徴です。今の時代に求められている背景や身につける方法について紹介します。

リーダーシップ

オーセンティック・リーダーシップが注目された経緯

「オーセンティック・リーダーシップ」という言葉は、2003年に世界的医療機器会社Medtronicの元CEOで現ハーバードビジネススクール教授である、ウィリアム・W・ジョージ氏(William W. George)が「ミッション・リーダーシップ」という著者の中で提唱したことから広がったといわれています。

さらに2018年頃からATD国際会議でもたびたび話題になり、注目度が高まっています。
※ATD(Association for Talent Development:タレント開発協会)とは、1943年に設立された産業教育に関する世界最大の会員制組織(NPO)。年1回国際会議が開かれている。

近年は、環境や社会を意識し、長期的な視点を持ったESG経営が注目され、社会性と倫理性が企業の存続に不可欠なものとなっています。消費者も組織で働く従業員も、組織のパーパス(志)を重視するようになってきている社会的背景に、自分の価値観や考え方に根ざして人を導く「オーセンティック・リーダーシップ」の考え方がマッチし、広く普及したとも考えられます。

オーセンティック・リーダーシップの意味

オーセンティックとは、日本語では「本物の、真の、れっきとした」という意味を持ち、「その人本来の在り様」「自分らしい」状態のことを表します。つまり、オーセンティック・リーダーシップとは、誰かの真似ではなく、倫理観を重視し、自分自身の価値観や信念に根ざしたリーダーシップといえます。誰もが「自分らしさ」を発揮することでリーダーになれるという考え方です。2000年代に入って注目され始めた概念で、それまでのリーダーシップとは特性が大きく異なります。

過去のリーダーシップ理論の変遷

リーダーシップ理論の歴史は長く、古くは1800年まで遡ると言われています。「リーダーシップ」とは、チームの中で共通の課題や目標を明確にし、他人や組織を導くスキルのことであり、いつの時代にも求められてきた資質です。

リーダーシップ理論とは、組織やチームが成果を達成したときに、「誰をリーダーに置いたのか」ではなく、「その組織のリーダーがどのようにして成果を達成したのか」に注目し、そこから成功のポイントを導く理論です。 

「リーダーシップ理論」には絶対的な解は存在せず、時代や環境の変化によって形を変えています。今もなお「リーダーシップ理論」の研究が続けられているのはそのためです。 

ここで、過去のリーダーシップ理論の変遷を見てみましょう。

(1)特性理論(1800年〜1940年代)

個人的な資質や特性に着目し、優れたリーダーは生まれつき「リーダーシップ」の資質を持っていると考える理論のことです。才能を診断するツール「ストレングス・ファインダー」や「ビッグファイブ理論」などが開発され、特性を把握し、リーダーシップ開発に役立てられています。

ウェビナーレポート「ストレングス・ファインダー」

(2)行動理論(1940年代〜1960年代)

リーダーの行動に着目した理論です。優れたリーダーと非リーダーの行動を比較し、リーダーの行動を分析研究することで、優れたリーダーを作り上げようとしたものです。代表的な理論としては「PM理論」があります。PM理論とは、Performance=集団の目的達成や課題解決に関する行動と、Maintenance=集団の維持を目的とする行動とを2軸のマトリクスで類型化したものです。

(3)条件適合理論(1960年代〜)

個人の特性や行動だけではなく、集団が置かれた状況や条件に着目した理論です。いかなる状況下でも普遍的に優秀なリーダーは存在せず、優秀なリーダーは条件や条件によって違うとする考え方です。「集団が置かれた環境」と「部下の性格や能力」を掛け合わせて有効なリーダーの行動が決まることを示した「パス・ゴール理論」や、メンバーの発達度に注目する「SL理論」などがあります。

シチュエーショナル・リーダーシップ理論(SL理論)

(4)リーダーシップ交換・交流理論(1970年代〜)

リーダーとフォロワーの相互関係がもたらす影響に着目した理論です。リーダー・フォロワーのどのような価値交換が、リーダーシップ発現に有効かを考えるものです。フォロワーからの信頼獲得によってリーダーシップの有効性が決まる「信頼性蓄積理論」はその一つです。

(5)変革型リーダーシップ理論(1980年代〜)

社員の能力を引き出すために、ビジョンや危機感を共有して、変革を推し進めるリーダーシップのことです。

(6)倫理型リーダーシップ理論(1980年代〜)

「リーダーとはどういう存在であるべきなのか」に着目した理論です。従来の支配的なリーダーとは異なり、倫理観に軸足を置くことが特徴です。リーダーが部下に奉仕し支援する「サーヴァント・リーダーシップ」や、高い倫理観や道徳観を持って部下を導く「オーセンティック・リーダーシップ」が含まれます。

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近年注目のリーダーシップに見られる傾向

従来のリーダーシップは、パワーや権力といった支配型のリーダーが主でしたが、近年は倫理観や価値観を重視する信頼型のリーダーシップにシフトしています。この変化は、働き方の多様化によって、個人の自律的な価値観が高まったことや、心理的安全性など組織の「関係性の重視」が組織の業績向上に寄与するとする研究が進んできたためと言われています。

また、ビジネスを取り巻く環境の変化や、情報化による課題の複合化により、1人のリーダーの力では問題に対処しきれなくなりました。そこで組織全体、集団を生かす方向にリーダーシップがシフトしているともいえます。

オーセンティック・リーダーシップの特性

オーセンティック・リーダーシップの概念を世間に広めたウィリアム・W・ジョージ氏は「ミッション・リーダーシップ」という著書の中で、オーセンティック・リーダーに求められる5つの特性をあげています。 

  • 目的観自らが果たすべき目的をしっかり理解している
  • 価値観自らが重視する価値観や倫理観に基づいて忠実に行動する
  • 情熱的周囲に本音で語りかけ、情熱的に人をリードする
  • 人間関係お互いが支援しあえる人間関係を築く
  • 自制自らを律し、学び続ける姿勢をもつ

描き出されているのは、ビジネス環境が激変する今、「自分の強みや弱みをしっかりと見つめたうえで、自分らしさに基づいてリーダーシップを発揮し、その結果、周囲が自然と動き出す」というタイプのリーダーシップといえるでしょう。

オーセンティック・リーダーの育成法

オーセンティック・リーダーシップを身につけるための、4つのステップを知っておきましょう。リーダーには「倫理観」が伴った「自分らしい行動」が求められています。つまり、自分自身の「倫理観」をあらためて理解すること、その論理観に伴った行動ができているかの確認が必要です。

自分自身を理解すること

自分の強み・弱みを理解し、自分の態度が周りにどのように理解されているかを把握します。また、自分のとった行動に対して、納得できる行動、納得できない行動がどのようなものか確認し、自分はどのような行動をすべきなのかと考えているかについて観察します。

自分の倫理観を理解すること

自分が社会や企業など、周囲に対して公平であるために、自分がもつべき倫理観について理解します。

自分の行動を確認すること

自分のとった行動が、自分の目指すべき目標や重視する価値観や倫理観に沿った行動になっているか確認します。

周囲と透明性のある関係性を保つこと

周囲とのコミュニケーションや行動が公平で、秘密を持たない関係性になるように気をつけます。

上記の4つのステップは研修で身につけていくとより効果的です。企業がこれからも存続していくためには、企業が求められる価値観や倫理観を学び、確認することが求められます。また、個々が重視する価値観や倫理観について考えるワークを実施し、各々の考え方について話し合ったり、社内で実際に起きた倫理が問われる事例を題材に倫理について考えるワークを実施することも有効です。倫理観について考え直すことで、社内のコンプライアンスの強化にも繋がります。

リーダーシップチャレンジ
リーダーのためのマネジメント向上

オーセンティック・リーダーシップでは個人の価値観、個人としての「自分らしさ」「あるべき姿」に対する気持ちの強さや安定も必要です。そこで、マインドフルネスで数分程度瞑想を行い、自分の考えを整理することが有効だと言われています。

マインドフルネスを組織開発に活かす

VUCA時代で企業が存続していくためには、自分らしさと価値観や論理観を持ち、周囲を引っ張っていくリーダーの存在が必要です。自社にとって理想の「オーセンティック・リーダーシップ」像について、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。