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人事DX(HRDX)とは?HRテックとはどう違う?

公開日:2021/08/03 更新日:2023/09/14

最近「人事DX(HRDX)」や「HRテック」という言葉を目にする機会が増えました。どちらも、人事業務を効率化するのに有効な手段といえます。今回は「人事DX」と「HRテック」は何が違うのか、また人事部門のDX化とはどういうことかについて考えていきたいと思います。

人事DX

そもそも「DX」の定義とは

DXは、Digital Transformation デジタルトランスフォーメーション)の略語です。

DXという語については、「社内のIT化を進めること」や「効率を高めるためのIT化」というイメージを持たれている方もいるでしょう。しかしDXは、単なる「デジタルの活用」「IT化」ではなく、「デジタル技術を活用して競争優位性を確保すること、ビジネスモデルを変革すること」が目的とされています。

人事部門での「DX」とは

それでは、人事部門にとってのDXとは何でしょうか。

人事DX・HRDXの明確な定義はありませんが、「人事業務にデジタル技術を取り入れ、人事データを抽出・分析・活用することで、個人・組織のパフォーマンス向上や企業文化・風土の変革をすること」と言えるでしょう。

これがどういうことかを、以下もう一つのキーワードである「HRテック」と比較しながら考えてみます。

HRテックとは

HRテックとは、人事を表すHR(Human Resource)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。テクノロジーを活用して、人材育成や採用管理、人事評価などの人事業務全般を効率化するためにシステム化に導くソリューションサービスを意味しています。

人事領域で使用されているサービスには、採用管理システムや人事評価システム、給与計算システムのほか、従業員の人材データを一元管理して可視化するタレントマネジメントなどがあります。現在、これらのサービスが普及している背景には、クラウドによって初期費用を抑え容易にシステムを利用しやすくなったことや、スマートフォンなどの端末の導入によりシステムが使いやすくなったことなどが挙げられます。また、ビックデータやAIを活用することで、これまで不可能だった大量のデータ分析が可能になったことも、普及した理由の一つです。

人事DXとHRテックの共通点・相違点とは

両者の概念の定義は上記のとおりですが、具体的にどんな共通点・相違点があるのでしょうか。

まずどちらにも共通しているのは、「人事業務の効率化」を意図しているものであるということでしょう。

一方で、違いとしては、人事DXは業務効率化のみならず、その先の「データの分析・活用を通したヒト・組織の変革」に重きが置かれているという点にあると言えます。ツールを導入して終わりではなく、「エンプロイーエクスペリエンスの向上」「理念やカルチャーの浸透」などに応用することまで見据えた、戦略的な一連の取り組みであることが重要です。

人事部門のDXとして注目されているピープルアナリティクスという概念

人事部門のDX化を進める上で、「ピープルアナリティクス」という人材マネジメントの手法が注目されています。「ピープルアナリティクス」という語の明確な定義はありませんが、一般に、いわゆるHRテックも活用しながら従業員やチームに関するさまざまな人事データを収集し、それらを分析することを指します。こうした活動により、人事に関わる意思決定に活かすことができるというわけです。もともとは、Googleの調査プロジェクト「Project Oxygen」が起源と言われています。

ピープルアナリティクスを導入することで、これまでできなかった人事に関する問題を解決できます。採用領域であれば、属人的な判断によらずに優秀な人材を採用できる、人材育成領域であれば、スキルデータを分析することで適材適所に人員配置ができるなどのメリットなどが考えられるでしょう。分析して得られたデータをもとに、よりよい解決策や判断基準を導けるようになるのです。

人事DXで目指すべきところは?

今のところ、人事DX化の推進を掲げながらも、HRテックを導入しただけにとどまり、データの活用ができていない企業も多いのが実情です。しかし本来は、HRテックを導入したあと、それによって収集できるデータをもとにピープルアナリティクスに取り組み、今まで感覚的に行っていた人事を変えていくことこそが人事DXともいえるでしょう。社員情報を一元管理・見える化し、「戦略的な人材配置」や「育成計画」「採用計画」を立てるところまでいって初めて人事DXといえます。

このように考えてみると、人事DXは、「多くの企業が取り組んでいるから」という理由で取り組んでもうまくいかないかもしれません。

人事DXをうまく推進するためには、経営戦略と紐づいた人事戦略をベースに、現状の人事課題を正しく認識したうえで、その解決を目的とした計画立てを行いましょう。
また、HRテックのツール導入自体をゴールとするのではなく、その先のデータ活用で「どんなヒト・組織にしていきたいか」というビジョンをゴールに設定するということもポイントとなるでしょう。

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