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リモートワークの浸透でますます注目される「ジョブ型雇用」

新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークの導入が進んでいます。これに伴い、労働時間だけで仕事の成果が測りにくくなったこともあり、あらためて「ジョブ型雇用」が注目されています。日本でこれまで主流だった「メンバーシップ型雇用」と比較しながら、まずはそれぞれの特徴をみてみましょう。

ジョブ型雇用

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用は、欧米では主流の雇用方式で「仕事に人をつける働き方」と言われています。求人の段階で職務内容や勤務地、必要なスキルや給与がジョブ・ディスクリプション(職務記述書)が明確に定められています。逆に言えば、ジョブ・ディスクリプションに記載がない職務は行うことができません。

メンバーシップ型雇用とは

一方、日本で主流の「メンバーシップ型雇用」は「人に仕事をつける働き方」です。終身雇用や年功序列の制度が軸となっていて、仕事内容や勤務地などが限定されない、ポテンシャルや人柄も考慮した雇用方式です。職務の境界があいまいなので、能力や意欲によって仕事の幅を広げることができます。

ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用の大きな違いは、仕事と人、どちらを基準に考えてマッチングするのかという点にあるといえるでしょう。

ジョブ型雇用をめぐる現状と、注目されている背景

日本でも、ダイバーシティ対応のため、また国際標準との整合性を図るために、以前からジョブ型雇用という言葉自体はありましたが、あまり認知されていない状態でした。

2020年12月にリクルートキャリアが実施した『ジョブ型雇用』に関するアンケートによると、ジョブ型雇用の認知率は54.2%、導入状況は12.3%。また、導入企業のうち約7割がこの一年半以内にジョブ型雇用を導入しています。
また、新型コロナウイルス感染症により「ジョブ型雇用の議論が促進した」と24.8%の企業が回答しています。背景には、コロナ禍に伴うリモートワークの急増で、姿の見えない社員をマネジメントするために、業務内容の明確化や労働時間の削減が必要になった、という事情もありそうです。

さらにリモートワーク化に伴い、IT化を推進するための特定領域のデジタル人材を雇用する企業もあり、職種別報酬の導入など、ジョブ型雇用がますます注目されている状態です。

また、2019年に経団連の中西宏明会長の「終身雇用の見直し」発言によって「同一労働・同一賃金」(同じ職務であれば、年齢の差による給料の差がない仕組み)にも注目が集まっています。この制度は、人ではなく仕事が基軸になるジョブ型雇用と親和性が高く、企業のジョブ型雇用への関心の後押しになりました。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用、それぞれのメリット・デメリット

リモートワークの導入に合わせてジョブ型雇用に切り替えることが必ずしも正解というわけではありません。会社の課題に必要な制度かの見極めが必要です。そこで理解しておきたいのが、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリット・デメリットです。

ジョブ型雇用:企業にとってのメリット
  • 専門分野に強い人材を採用できる
  • 専門分野の人材を育てやすい
  • 雇用のミスマッチを防げる
  • 労働管理の面での負担が軽減する
ジョブ型雇用:個人にとってのメリット
  • 専門的なスキルを磨きやすい
  • 自分の得意分野に集中しやすい
  • 高いスキルがあると、よりいい条件の会社に転職しやすい
ジョブ型雇用:企業にとってのデメリット
  • 社員が担当している仕事がなくなった時に、他の仕事に異動させられない
  • より条件のいい会社に転職されやすい
  • 会社都合で異動させにくい
  • 仕事内容に柔軟性がない
  • ゼネラリストの育成には向かない
ジョブ型雇用:個人にとってのデメリット
  • 社員が担当している仕事がなくなった時に、他の仕事に異動させられない
  • 仕事自体がなくなってしまうことがある
  • ゼネラリストになりにくい
メンバーシップ型雇用:企業にとってのメリット
  • 雇用が安定しやすい
  • 特性に合わせた育成ができる
  • 会社都合で人の異動がしやすい
メンバーシップ型雇用:個人にとってのメリット
  • 雇用が安定しやすい
  • 社員向けの研修やトレーニングが用意されている場合が多く、キャリアアップ・スキルアップできる環境がある
  • 柔軟に職務の幅を広げられる
メンバーシップ型雇用:企業にとってのデメリット
  • 人材育成に時間がかかる
  • 専門職が育ちにくい
  • 専門職が不足しやすい
メンバーシップ型雇用:個人にとってのデメリット
  • 会社都合の配置転換がある
  • 専門的なスキルがつきにくい

ジョブ型雇用導入に向けての今後の展開

最近は、日本の大企業でも終身雇用の崩壊という背景とグローバル事業拡大のために、ジョブ型雇用を導入する企業も出てきています。ただ、ジョブ型雇用を導入すれば、企業の課題が解決するわけではなく、導入と同時に雇用システム全体の見直しが必要です。

これは、解雇が難しい日本では、欧米型のジョブ型雇用をそのまま導入してもマッチしないためです。そこで、企業の戦略の強化と社員一人一人の才能を開花させるために、ジョブ型×メンバーシップ型を交えたハイブリッドな“日本型のジョブ型雇用”の在り方を模索する動きも出てきています。その他、学生の段階から雇用への意識を変えていくために、大学などの教育機関を含めて人材育成のあり方を変革していく必要があるという声も上がっています。

環境の変化、雇用の多様化によりビジネス市場は日々変化しています。コロナ禍でますます働き方の変化が進む中で、柔軟に対応するために新たな雇用方式の一つとして「もし、抱えている経営課題を解決するためにジョブ型雇用を導入するとどうなるか?」と考えてみてはいかがでしょうか。

ただし、現在の雇用制度を見直す際には、ジョブ型雇用のメリット・デメリットだけではなく、起こりうる評価制度や配置、雇用形態などの変化に対して準備が必要なことを考えておく必要があるでしょう。

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