今どき研修テーマ&メソッド図鑑

階層別研修事例とともに理解する「チームビルディング」のための学び

公開日:2022/10/12 更新日:2023/09/14

リモートワークが定着し、職場のメンバーが直接顔を合わせる機会が減った今、「チームづくり」が難しくなっているという声もよく聞かれます。コミュニケーションが取りづらかったり、意識合わせがうまくできなかったりすることで、組織が望ましい状態でなくなるというのは問題。チームの力を最大限に発揮させることを目指す「チームビルディング」とは何かを解説し、そのために有効な学び方について、実際の研修事例を交えてご紹介します。

チームビルディング

チームビルディングとは何か?

チームビルディングとは、異なる価値観を持つメンバーが多様性を発揮し、協力し合いながら、共通のゴール達成に向かう組織をつくる取組みです。直訳すれば「チームを作る(構築する)」という意味ですが、もう少し詳しく言うと、「メンバー相互が理解しあい、組織のビジョンを共有して活動できる状態を作る取り組み」です。1人の能力では達成できないことを、チームの力で実現するための土台作りとも言えます。

また、チームの関係性と状態をより良くするために開発された研修や手法自体を「チームビルディング」と呼ぶこともあります。組織の結束力を高めたり、体験の共有をしたりするためのオフサイトミーティングや研修がこれにあたりますが、その中には参加者全員が身体を動かして体験するアクティビティも含まれます。その他、仕事以外の場でチームの親睦を深めること、たとえば登山、ロッククライミング、キャンプ、料理、ものづくりなど、共通体験から得られる効果を狙って行うイベントもチームビルディングの一種といえます。

「タックマンモデル」とチームの5つの段階

チームビルディングの過程を示すモデルとしてよく知られているのが「タックマンモデル」です。1965年に心理学者のブルース・W・タックマンが提唱したモデルで、チームが結成されてから実際に成果を挙げられるようになるまでをいくつかの段階に分けて捉え、各段階でどんなこと行うとより強固なチームができるかを示しています。

タックマンモデルによると、チーム形成は以下のような段階に分けられます。

形成期

チームができたばかりの頃です。メンバー同士の理解が不十分なため、「お互いを理解する」ことが必要な段階といえます。何らかのアクティビティに取り組むことも、互いの理解を深める助けとなるでしょう。

混乱期

チームの目標が決まり、チームとして動き出した頃です。メンバーがそれぞれの考えや価値観で動くため、チーム内での対立が起こりやすくなります。「対立をどうクリアするか」を考えるべき時期で、ここをどう乗り越えるかがチームの成否を左右します。業務外のイベントなどで本音をぶつけ合う場を設けることも効果的です。

統一期

お互いの意見を出し合うことで、考え方や価値観を理解することができ、チームがまとまっていく時期です。この頃になると、チームにも統一感が出てきます。ここからは「個人の個性を活かすための役割分担」「チームの目標設定」などにより、活発な議論が進むように仕向けることが必要です。

機能期

チームの成果が出てくる時期です。この頃になると、メンバーが一人ひとりの役割を果たすだけでなく、メンバー同士でフォローし合うようになっているでしょう。各メンバーの自発性を促すことが、より強固なチーム作りに繋がります。

散会期

プロジェクトの解散やメンバーの移動でチームが解散する時期です。それぞれが解散を惜しむような反応であれば良いチームだったと言えるでしょう。

このようにチームを成長させていくために、企業組織内の各階層に期待される力を身につけていくことも重要です。

階層別に身につけるべきことと研修事例

チームビルディング研修はあらゆる立場や役職の人に有効ですが、それぞれの役割に合った文脈で取り入れることが必要です。

内定者・新入社員・若手社員

社会人としてのスキル・マインドセットの形成のために活用できます。「社会人として主体性が必要なこと」「なぜコミュニケーションが必要なのか」など、組織におけるメンバーとして求められる意識や行動を参加者と一緒に学ぶことができます。

研修実施事例①

A社(業界:小売、従業員規模:約350名)

■対象
新入社員

■実施背景
コロナ禍で入社してきた新入社員同士が配属後も相談や近況の確認が気軽に出来るような関係性を構築させたい。

■実施内容
グループワークを多めに実施し、自己開示、役割分担、相互協力を促進。なかでも、チームメンバーで協力して行う「即興演劇」では、与えられた課題に対して、自ら必要な役割を見つけ出したり、全体最適の行動に繋げたりすることの重要性を認識。同期メンバー間の絆を強化し、仲間意識を醸成することができた。

中堅社員・チームリーダー

この階層は、自分の成果だけでなく、リーダーとなりチームで成果を上げていくことを求められます。管理職と現場の橋渡し役として、チーム全体の目標を達成するための組織づくりやメンバーへの働きかけ方を学んでいきます。また、将来会社を担う管理職候補として、マネジメントの補佐としての力をつけることも目的となります。

研修実施事例②

B社(業界:保険、従業員規模:約6800名)

■対象
チームリーダー

■実施背景
チームリーダーとして、活力のある職場を作るための基本知識を習得してほしい。その上で必要になるコミュニケーション手法を学び、現場で実践できるレベルまで研修の中で落とし込んで欲しい。

■実施内容
まずは、「チームワークが良い状態とはどういうことか」を自身の言葉で言語化し、チームで議論した後、組織の成功循環モデルなどの基本知識を座学で習得。
さらに、コミュニケーション手法を学び、ロールプレイを実施したことで、現場に持ち帰ってすぐに実践できるようにした。
また、時間を空けてフォローアップ研修を行い、実際に研修内容を実施したかどうかを振り返る場も設けた。

管理職

ミドルマネジメント層には、経営層の意思をメンバーに伝え、実行させる役割があり、部下の育成も目的とされます。チームビルディングを通じて、部門の壁を取り払い、組織が連携して目標を達成するための体制作りが学べます。

経営層

経営層同士、そして全社に対するビジョン共有が問われます。経営ビジョンを発信・共有し、一体となって組織運営するための力を磨きます。

チームビルディングで得られるメリット

チームビルディングに取り組むことによって得られるメリットには、次のようなことがあります。

①コミュニケーションが活発になる

チームの問題の一つにコミュニケーション不足がありますが、共通のゴール・目標に向かうプロセスについて意見やアイデアを交わすことで、コミュニケーションの量、質が向上します。メンバー間の「報・連・相」が増えることもメリットです。

②関係性の変化が起こる

チーム内のメンバーの価値観や考え方を理解できるようになることで、メンバー同士が認め合い、サポートできるようになります。また、ゴールを共有しそれを一緒に達成しようとすることによる一体感も形成されます。

③マインドセット、モチベーション向上

チームの力を最大限に発揮するには、メンバー一人ひとりの力を最大限に発揮することが必要です。チームビルディングの中で、それぞれのメンバーに「チームで目標を達成したい」「チームに貢献したい」というマインドが形成されます。さらに、チーム内での自分自身の役割を実感することは仕事におけるモチベーションの向上に繋がります。

④新しいアイデアが生まれる

チーム内での心理的安全性が確保されることにより、自分の意見を発言しやすくなります。すると、一人の意見が他のチームメンバーの意見と融合し、これまでに考えつかなかったような新しいアイデアが生まれます。

効果を最大化するためにはどんなことが必要か

チームがうまく機能するためには、単に一緒にアクティビティに取り組むだけでは十分ではありません。重要なのは、心理的安全性の感じられる場をつくり、メンバー同士の信頼関係を作ること。また、組織のビジョンと個人のビジョンが結びついていることも欠かせません。
こうしたポイントを踏まえた上でチームビルディングに取り組めば、各メンバーからより主体的な関わりを引き出すことができるでしょう。

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