言葉を超えて「関係の質」を高める組織開発 vol.2 組織開発のパラダイムシフト

研修の最前線で活躍する講師へのインタビューを通じて、人材育成について考えるシリーズ。
組織開発・組織変革と“楽器”―。一見、遠いところにあるように思えますが、言葉の限界を超えて組織の「関係の質」を高めることに、「リズム」は大きな作用をもたらします。組織メンバーの参加意識・協働意識や、創造性につながるアクティビティ「ドラムサークル」を切り口に、人間の本能への理解を踏まえた組織開発の取り組みについて、深代達也講師にお話を伺っていきます。

日々起こっている「価値の方向づけ」とは?

-組織開発で最近おこなわれている“対話”は、課題を見つけ施策を打とう、と取り組むのではなく、対話をすること自体の中で人と組織が変わっていくことが大切なのですね。

(深代)
そういうアプローチですね。最近の言葉で言うと「社会構成主義」という考え方があります。現実というのは1つではなく、言葉・非言語の情報が個々人の認知を作っていて、その認知によって人は行動しているという考え方です。その認知を作っているのはコミュニケーションです。

例えば、アマゾンの方では、「時間」という概念がない民族がいます。
「未来」というような言葉自身がない。言葉がないということは、「未来」というものも考えないということです。それはその社会で生活するために概念として必要ないから考えなくてもいいのです。

だから、私たちが「過去」とか「未来」について思うことは、実はそれはこの社会でうまく生活するためのメタファーでしかない。

-認知は人それぞれのものであるということですね。

深代さん2(深代)
認知というのは言葉の「政治」である、というような話があります。
例えば、「美とは何か」と定義すること自身が「政治」であるみたいな。
だから、「Aをやった方がいい」と言うことによって、「A」というものに価値をつけながら世界を作っていくわけですよね。そこは「政治」、言い換えると「価値の方向づけ」です。

組織開発のパラダイムシフト

-組織の中で、「価値の方向づけ」というものはどのように起きているのでしょうか。

(深代)
目に見えない「価値の方向づけ」は、日々行われていて、ちょっとした声掛けにも実は、そういう方向づけが満ちあふれているのです

常に、あるしぐさ、行動、何かの結果に対しての小さな行動、そんなことに「価値の方向づけ」があって、暗黙の内に私たちに互いに埋め込まれていくわけですよね。

組織開発のアプローチで言うと、意識調査・社員アンケートで何か組織課題を抽出して、事務局中心にトップから部門に一方的に“ビジョンをもっと浸透させろ”とか、“社員の意識を高めろ”と呼びかけて施策を展開したとしても、組織の中では「価値の方向づけ」が日々のやりとりの中で埋め込まれているので、そんなにうまく誰かがコントロールできるものではありません。逆に、その”上から目線”の施策自体が、「単に仕事が増えただけ」ということにもなりかねないのです。

組織メンバー自身による対話で関係性を変えながら変化に対応するなど、現実を行動によって作っていくやり方でなければうまくいかないのです。
そんなところが、対話型、あるいは社会構成主義的な考え方の、組織開発の新しいパラダイムだと思います。

でも、そこで、“じゃあ皆さんで対話をしましょう!”みたいに始めると、何か気持ち悪いと思いませんか?

-不自然な感じを受ける人もいるかもしれませんね。

(深代)
例えば、組織変革のステップでは、変革に対するメンバーの受け入れ余地を高めるために、まず変化の必要性を共有し、そして望ましい未来イメージ・ビジョンを創っていく、というステップがあります。「変化の必要性」も「未来イメージ・ビジョン」も、対話によって、メンバー一人一人の認知として形作られていくわけです

しかし、この対話が、表面上はうまくいっているように見えても、実はうまくいかないことがある。
いきなり「対話をしましょう」と前向きな問題意識の共有を呼びかけたとしても、元々の関係性がない限りなかなかうまくいきません。

「コントロールされるのではないか」「評価されるのではないか」と用意された場で発言することに不安を持つ人も、「またどうせトップや担当部門のパフォーマンスで、どうせ変わらない」などと、その場自体をあまり信用していない人もいるでしょう。安全・安心、信用を求めることは非常に動物的な、生理的なものなのです。

~つづく(2/4)~

◆深代 達也(ふかしろたつや)プロフィール◆

一般社団法人日本能率協会 KAIKAプロジェクト室 主管研究員
組織開発分野セミナー講師:チームビルディング、組織力向上、モティベーションマネジメント、エンゲージメント向上
米国NLP協会認定トレーナー、DiSC公認インストラクター、Ocapiプラクティショナー
米国REMO社HealthRhythms&HealthRhythms Adolescent Protocolファシリテーター
“トレーニング・ビート”認定トレーナー、ドラムサークルファシリテーター協会会員
日本能率協会総合研究所にて、バランスト・スコアカードや人事革新・組織活性を中心としたコンサルティング&人材育成に従事。同研究所経営コンサルティング部長を経て「人と組織の可能性の最大化」を使命とする株式会社可能性コンサルタンツを設立。その後現職。
現在は、音楽なども活用した組織開発の推進支援、企業理念共有支援、エンゲージメント向上支援、インフルエンサーに向けたチームをエンパワーする力向上などの現場指導・人材育成等を推進している。

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