未来を洞察する時代 Vol.4 未来予測の6つの『成功のカギ』

『未来を洞察する・予測する』という活動は、日本企業にとってどれほど重要性・緊急性を増し、またこれから私たちは「未来洞察」「未来予測」をどのように進めていったらいいのか。

JMA主催「日本CTOフォーラム」でのファシリテーターをお務めいただいたり、「未来洞察」「未来予測」の第一人者として研究・講演活動をされている富士通総研特任研究員 安部忠彦氏にお話を伺いました。

(前回の内容はこちら

未来予測成功のカギ

最後に、未来予測活動それ自身と、それを戦略に結び付けるための成功のポイントについて述べてみたいと思います。

1.“存続するために不可欠”という認識を

第一に未来予測は当たりにくく不確実なものですが、それでも必要という強い認識を持つことです。経営環境が、従来の延長からすぐ外れるのが常態化するほど変化が激しい中で、多様な未来への手立て、戦略を多数持ち、持続的に顧客に適切な価値を提供し続けて生き延びるために必要なものなのです。

将来の事業戦略策定では具体的な未来事業・商品を考える必要がありますが、どうしても目先や現状の価値観に引きずられ、従来の自社の決定や他社と似た結論になりがちです。

これを避けるためにも、10年先、20年先の環境変化、技術がこうなっているという危機意識に満ちた予測を前提としてまず頭に入れたうえで未来の戦略を考える必要があり、あらためて未来を読むことの必要性を認識いただきたいと思います。

2.社員全員の危機意識

第二に、成功のカギは、社員全員の強い危機意識です。未来のわが社が、そして自分がどのくらい追い込まれているかという危機意識の強さが、“不確実かもしれないが未来予測活動は不可欠”という考えを支え、それを基に将来の戦略立案に駆り立てる原動力になります。

3.未来予測を確実にアクションに結び付けること

第三は、未来予測は手段にすぎないことを踏まえ、真の目的として、勝つための戦略策定、実際の企業アクションに結びつけることです。企業は未来予測を”占い”として興じているわけではありません。未来予測は、企業が継続的に生き残れるための戦略策定活動に活かしてこそ初めて意味を持つものです。戦略立案では、未来の読み方に独自性を入れ込み、他社との違い、差異化を強く意識することが重要です。

4.すでに見えている未来の重要事象への対処

第四は、“すでに見えている未来に確実に対処することも重要”ということ。

予備未来予測で求められるのは、将来に向かって重要な事象がどうなるかの解明です。しかし、そういう先行きがわからない重要な事象は、実はそれほど多くはありません。むしろ重大な課題は、”すでにわかっている未来”での重要な事象に関する対処ができていないことの方だとも考えられます。例えば少子高齢化や地方の衰退、財政破たん危機、地球環境悪化など、未来の姿は既に多くの事がわかっている。技術の進歩や新興国の発展で、思わぬライバル企業がどこからともなく出現しそうだということもわかっている。

しかし企業は、これらの未来にどう対処するかの“処方箋”創りを怠っているのではないでしょうか。それを自社の既存事業内で考えると、ビジネスモデルはなかなか変えられないということになり、“しがらみ”のない新規参入者が異業種から入りこみ、彼らに手も無く負けてしまう事例は多くある話です。

「わからない未来」よりは、わかっていながら自社内では対処しきれず、思わぬ異業種参入者に負けてしまいそうな、「不気味な未来」のほうが実は怖い。これに確実にどう対処するかも成功の一つのポイントになります。

5.全社機能の動員

第五に、フェーズの性格の違いに応じた多様な人材の参画や、全社の巻き込み、という点も挙げられます。未来予測から戦略立案までの作業フェーズは多様な性格を持っており、それぞれのフェーズ毎に必要な人材タイプは異なります。

最初の未来予測のフェーズでは客観的な資料の収集分析が組織的になされることが望ましく、次の洞察、戦略立案のフェーズでは、発想に斬新さが求められ、また事業としての成立可能性検討も重要になるので、マーケティング機能との協業も重要です。
それぞれの作業フェーズでふさわしい人材を選び配置する上で、社内の一部署だけでなく、全社機能を動員することが成功を左右し、その場合には経営トップの意欲と全社への指示が重要です。

6.トップのリーダーシップ

最後に、トップの強いリーダーシップの重要性について指摘したいと思います。

未来予測からだけでは予定調和的に戦略、事業ドメインは決まりません。経営トップには強い意図、「衆議独裁」と表現されるような姿勢が必要とされ、会社の方向性を決める場面も多くあります。未来予測はその決断のための重要な材料です。

R&D部門の大きな役割な一つは、経営トップの意図を実現するための技術の準備を怠りなくしておくことであり、CTOなど技術トップは、経営トップに対し技術を目利きして、将来の重要な技術を示していくことが求められるでしょう。

 

~おわり(4/4)~
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安部 忠彦(あべ ただひこ)株式会社富士通総研 経済研究所 特任研究員

【専門領域】
産業構造変化、競争力、技術政策、サービス・サイエンス、サービス・イノベーション、技術経営(MOT)
【最近の研究テーマ】
•日本のICT投資を経済成長に繋ぐには
•グローバルICTガバナンスの在り方
•産学連携を成功させるために
•日本の技術経営におけるCTOの果たす役割り
•オープンイノベーションの在り方

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