未来を洞察する時代 Vol.3 戦略にどう落とし込むか?

『未来を洞察する・予測する』という活動は、日本企業にとってどれほど重要性・緊急性を増し、またこれから私たちは「未来洞察」「未来予測」をどのように進めていったらいいのか。

JMA主催「日本CTOフォーラム」でのファシリテーターをお務めいただいたり、「未来洞察」「未来予測」の第一人者として研究・講演活動をされている富士通総研特任研究員 安部忠彦氏にお話を伺いました。

(前回の内容はこちら

未来予測をどんな体制で行うか

≪社内でやるか・外部に託すか≫
未来予測を行う体制のポイントとしては、社内中心でやるか外部中心でやるか、定常的な活動かイベント的な活動か、メンバーをどう選ぶかという視点があります。
ある外資系企業に聞いた事例で、ほとんど社外コンサルテイングファームに頼んでいるというケースがありました。経営の分業が進んでいる外資系らしい考えです。確かにグローバルに経営活動を広げている企業からすれば、専門性の高さや企業の活動範囲をカバーする俯瞰的な視点で分析提案してくれる外資系コンサルテイングの活用な有効でしょう。
多くの企業の場合は、社外のコンサルテイング会社を活用しつつ、社内の人間が中心に行うというのが実態だと思います。やはり自社の実態をよく知る社員を入れるほうが視点的にも熱意的にも必要です。

≪いつやるか≫
④定常的・日常的に行うか、長期戦略策定時などにイベント的に行うかという点で言うと、以前はイベント的に行う企業が多かったと思われるが、近年は日常的にもマーケティングリサーチとは別に行われる例が増えているようです。経営環境の変化が激しくなり、常時未来予測活動を行う必要性が増しているということなのでしょう。

自社の経営にとって、短期的にではなく長期的な視点で大きな影響を与えそうな事象、兆候があった場合、「それはどのような本質的な意味を持つのか」、「自社の経営、事業に長期的にどのような影響をもたらすのか」、「自社として、今どのような対応をとるべきか」を経営層に対し説明し議論するためのネタ作りが大きな役割となります。当然個々の事業部としてよりも、コーポレートとして、長期的視点で行うべき活動になります。

≪誰が担当するか≫
未来予測に参加するメンバーについては、定常的な作業とイベント的な作業とでやや異なるが、事例が多いイベント的な作業の場合に関して述べてみたいと思います。
実態的には、社会や会社の事情に詳しい、社内の他部署にも興味を持つような人が選ばれているようですが、結果的には中高年、男性、日本人に偏りがちのようです。部門で見ると戦略・企画室が音頭をとって、研究所(Technology)、マーケティング部署(Economy)、経済研究所(Social、Economy)、渉外部(Policy)、環境部(Environment)などからメンバーが参集することが多いようです。メンバーの中に、短期志向になりがちな事業部門をどう参加させるかに多くの企業が悩んでいます。望ましいメンバーの構成としては、年齢的なバランス、多様性のバランスが求められています。

未来予測を戦略に落とし込む際のポイント

本来“未來予測”はそれを行うこと自身が目的ではありません。重要なのはそれらを使って、他社と差異化された事業戦略や技術戦略を生み出し、企業収益を上げることです。

しかし未来予測作業とそこから自社の具体的な戦略に落とし込む作業では、それを行う適切な人材タイプに違いがあると思われることや、本質的に未来予測された事項から、予定調和的にそのまま事業戦略や技術戦略が生まれるわけではないため、両者をつなぐことにはかなりの困難を伴います。前者の作業過程で力尽きることも実際は多いと思われます。
未来予測から事業・技術戦略への落とし込みの一般的なパターンは図のようになります。

安部さん図未来予測を戦略立案に落とし込むのは、困難な作業です。この作業には、”各社同じような戦略になりがち”、”どこで差をつけるか全社的な未来予測と戦略立案とが結び付きにくい”、”未来予測から生まれる戦略案が社内で賛同を得られにくい”、”事業候補は選べても、いつのタイミングで市場に出すかが難しい”などの問題が付随するでしょう。

 

 

 

ではどう対応すべきか。幾つかのポイントを挙げます。
①独自性
当然ですが、各社似た事業戦略、技術戦略になるのを避けるために、自社独自性を発揮し、他社と違う、他社と争わない事業ドメインを開拓することが重要です。

②全社的な仕組み
未来予測されたものを、必ず戦略策定に使用するような全社的な仕組みにすることです。
例えばある外資系IT企業では、3つのタイプ(経営者へのヒアリング、市場予想、技術予測)による未来予測を実施しています。それぞれは別個の部門が主担当で実施していますが、共通なのは3つともCEOがオーナーシップをとり、完成した成果は最初に必ずCEOが全部読むこととしています。このため、他の経営幹部もCEOが読んでいるとなれば、自分もその未来予測の成果報告書をしっかりと読まざるを得ず、自ずと全社的に共通の未来予測・洞察が把握、展開される仕組みになっています。それぞれ3つの未来予測・洞察は経営戦略、事業戦略、技術戦略への落としこみと人材育成に活用されているということです。

③経営トップの関与
実際の将来の事業ドメイン、具体的な事業は、経営トップが決断し、社内に明示するということ。戦略要素として重要な自社の未来の事業ドメインは、未来予測の結果からだけで一義的には決めがたいし、決めても社内説得は難しい。誰も未来においてその選ばれた事業分野が正解であることを証明することなどできません。こうした中で戦略分野や具体的な事業を決める工夫はどのようなものか。共通するのは経営トップ(層)の関与が重要ということです。

~つづく(3/4)~
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安部 忠彦(あべ ただひこ)株式会社富士通総研 経済研究所 特任研究員

【専門領域】
産業構造変化、競争力、技術政策、サービス・サイエンス、サービス・イノベーション、技術経営(MOT)
【最近の研究テーマ】
•日本のICT投資を経済成長に繋ぐには
•グローバルICTガバナンスの在り方
•産学連携を成功させるために
•日本の技術経営におけるCTOの果たす役割り
•オープンイノベーションの在り方

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