アセスメント・プログラムの3つの構成要素、アセスメント・トライアングル

能力を測定・評価するために必要な要素とは

前回の第1回最強の職務遂行能力評価ツールであるアセスメント・センター・メソッド(以下、ACMまたはアセスメント・プログラムと略す)の3つの構成要素を述べました。

  • ディメンション
    能力要件のこと。対象となる職務に必要な能力を一覧表にしたもの。
  • シミュレーション演習
    対象となる職務を模した演習。種類は主なものに集団討議(GD)やインバスケット(IB)、面接演習(IS)、方針立案発表演習(BP)、背景面接(HS)などがある。
  • アセッサー
    評価者。訓練と経験を積んだ行動観察法による能力評価の専門家。アセスメント・レポートの記述者でもある。

何事もそうですが、能力を測定・評価しようとするなら、まずはその求める能力を備えた人物像を描き、その評価要素を項目化、要件化して一覧としなくてはなりません。

これは職務遂行能力だけではなく、例えば身体能力の評価、例えば、オリンピックの競技種目に当てはめることができるのではないでしょうか。オリンピックでは、陸上や水泳、スキーのアルペン種目など勝敗が見てわかる種目と、体操やフィギュアスケートなど審判の採点によって勝敗が決まる競技があります。

競技終了後の採点で勝敗が決まる、採点競技というのはどのように能力を測定し、評価しようとするのでしょうか。

採点競技の評価では、その競技に求められる要素を抽出してカテゴリーとして定めることから始まります。採点競技の代表格でもあるフィギュアスケートで言うなら、技術点と構成点にカテゴリーを分けます。これはフィギュアスケートがジャンプなどの技術と音楽とのマッチングや演技のつなぎなどの構成によって評価していることを表します。そして、カテゴリーの中身をMECEに項目化します(MECE:「漏れなくダブりなく集めればすべてを尽くす」の意味)。フィギュアスケートの技術点で言うなら、トリプルアクセルは○○点、4回転サルコウなら□□点という具合です。

そして、能力評価の対象を明確に定めます。フィギュアスケートなら3分のショートプログラムと4分20秒のフリーでの銀盤上の演技が評価対象です。そこでどれだけ困難な要素をこなしたのかを評価します。能力とは簡単にはできないことをする力とするなら、どれだけのことを実行したのか、これが評価・採点の対象です。演技終了後にどれだけ素晴らしい笑顔を振りまいても採点の対象にはなりません。

評価するのは国際競技なら国際A級審判の資格者です。国際A級審判は、競技について熟知し、ルールを知悉している人です。その人が競技者の演技行動を観察して記録し、評価します。

アセスメント・センター・メソッド(ACM)の測定・評価の方法

アセスメント・センター・メソッド(ACM)、職務遂行能力の評価でも考え方は同じです。

当該職務(ACMでは初級管理職=課長相当を対象とするものが最も多い)をカテゴライズし、その要素をMECEに分類して要件化して定義して「評価項目一覧表」を作ります。その評価項目一覧表をディメンションと呼びます。求める人材像を構成する要素を評価項目として具体化するわけです。

そして、能力を評価するためには被評価者に当該職務を模したシミュレーション演習を与えて、演習に対して取り組ませます。演習への取り組みはフィギュアスケートでいう銀盤での演技に当ります。どれだけのことを実行したのか、シミュレーション演習を与えることで同一条件のもとで行動させるわけです。シミュレーション演習は能力の濃淡がよく観察できるよう困難さのあるものでなくてはいけません。

そして、フィギュアスケートにおける国際A級審判にあたるものがアセッサーです。アセッサーは当該職務を熟知し、ディメンションについて知悉していなくてはなりません。アセッサーはACMにおける評価対象者(アセッシーと呼びます)の行動を観察して記録し、評価します。

  • 求める人材像を具体化した評価項目
    フィギュアスケートなら採点表、ACMではディメンション
  • 評価対象となる行動
    フィギュアスケートならSPとフリーでの銀盤上の演技、ACMでは演習での遂行行動
  • 訓練された評価者
    フィギュアスケートなら国際A級審判、ACMではアセッサー

となります。

アセスメント・センター・メソッド(ACM)実現へ

私たちはディメンション、シミュレーション演習、アセッサーを「アセスメント・トライアングル」と呼び、この3つを能力開発に向けたアセスメント・センター・メソッド(ACM)実現に向けて磨いていきます。

■ディメンション

ディメンションは職務知識と職務技能を除いた職務遂行スキルを表すものでなくてはなりません。そして、個々の会社ごとに異なることが常識です。JMAは「アセスメント思想」を表現するために標準として19ディメンションのディメンション表を持ちますが、これはどの会社に対しても同じ評価項目(ディメンション)を適用するということではありません。きちんとディメンションについての打ち合わせを経た上で決定していきたいと考えています。ただし、自らのACMへの考えを明快に示すことは皆さまの信頼を得るために必要と考えています。従って、標準19のディメンション表を設定しました。

■シミュレーション演習

シミュレーション演習は当面は課長クラス相当を対象職務とした演習の整備を行っています。課長から部長になる、部長から役員になる、というのは求める要素としては大きな変化はないと言える面があるのですが、担当者から課長になる、というのは大きな変化があります。プロの将棋の世界で言うなら、三段までの奨励会員と四段からのプロ棋士に棋戦出場資格において格段の差があるのと同様、担当者と課長には職務遂行上で権限の有無という大きな差があります。よって、良い課長を育てることは組織のマネジメント力のみならず組織力の強化にもっとも資することとなるでしょう。良い課長を育てれば良い部長になり、良い役員となっていく。このような考えから、まずは課長クラスに対する演習の整備を急ぎます。皆さまが選べるだけの量を揃えたいと思います。

■アセッサー

アセッサーは経験豊富なメンバーを揃えました。しかし、アセッサーについて、ACMの実施会社として最も大切なことは「アセッサーを育てることが出来る会社であること」です。「アセッサーを育てることが出来る会社」が、そのACM実施会社のアセスメント(評価)の質を証明します。アセッサーの質をある一定以上に保つためにはアセッサー養成コースが欠かせません。出来合いのアセッサーを使うだけではなく、アセッサーを育てて長いお付き合いを皆さまの会社としていきたいと考えました。アセッサーを育てることができることを立証するため、アセッサー養成コース(仮称)は公開セミナーで行うことにしました。公開セミナーを数多く手掛けてきたJMAならではのコースであると考えています。

次回は「JMAがなぜACMをやるのか。育成と公開のACM」をテーマに述べます。

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